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「あ…の……」
なんて言えば正解なのか分からないし、のどが異常に渇く。
私は櫂が好きだ。
幼馴染としても、一人の男の子としても。
だけど櫂は違うから。
それなら、私がここで告白しても振られるだけだよね?
そんな事になったら私、これからどうやって櫂と一緒にいればいいの?
櫂は優しいから絶対に今までと同じように接してくれる。
でも私は同じように出来ない。
「叶絵?」
言うんだ、叶絵。
『違う、勘違いしないで』って、『興味があっただけだ』って。
言わなきゃ、なんだけど……。
「す、き……っ」
どうして泣きながら本当の事を言っているの?
「櫂、好き……っ、ずっと、ずっと、好き……っ」
こんなの櫂が困るだけなのに、私の口はどうしても止まらない。
涙は止まってくれない。
櫂は私の涙を拭うと、そのまま私に顔を近づけて『好き』を連発している私の口を塞ぐかのようにキスをした。
何が起きているのか頭で理解出来なくて、ただ目の前に櫂の綺麗な顔があるなって冷静に考えた。
だけど櫂が離れた瞬間、あれ私、今キスされなかった?って思って……
顔が真っ赤になって櫂を見上げた。
「なんで……っ」
「叶絵が俺に何も言わせてくれないから」
「……っ」
「俺も叶絵の事好きだよ。幼馴染としても大事だし、女の子としても凄く大事。俺は叶絵に出会った瞬間から叶絵に恋してるのに、全然気づいてくれないから」
「ま、待って。出会った瞬間からって……でも櫂は付き合った事……」
「あるよ。でも全部本気じゃなかったし、ていうか、恋人同士のするような事してる時、相手を叶絵に変換して見てたから」
「そ、そんなの……その子、可哀想……」
「別に可哀想じゃないから。『付き合え』ってしつこいし、勝手に擦り寄って来て彼女面してただけだから。俺から『好き』なんて一言も言ってない。それなのに『櫂は私を好きじゃないよね?』って最初から分かり切ったような事言って被害者みたいな顔されて。ほんと、勘弁なんだけど」
櫂は櫂で大変だったんだな……。
そう思いながら私は櫂をチラッと見た。
「櫂……付き合ってくれるの……?」
「もちろん。俺の方からお願いする」
頭の中がグルグルしてて、櫂が私の彼氏になった嬉しさとか、これからどうしたらいいのか分からない不安とか。
不意に浮かんだのは莉乃と郁人の顔だった。
ハッとして私は櫂の腕を掴む。
「か、櫂!」
「何?もう一回キスしてほしい?」
「え!?ち、ちが……っ。そうじゃなくて!あの……しばらく付き合ってるって、誰にも言わないでもらいたいなって……」
「なんで?」
「は、恥ずかしいから……」
小さな声でそう言って俯くと櫂はため息をついた。
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