花火と墓参り

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花火大会 当日。 私は郁人と一緒に待ち合わせ場所に向かった。 櫂と莉乃もクラスメイトに誘われて来ているはずだ。 櫂と一緒に花火を見れるなんて、いいなって思ってしまう。 勇気出して私も誘ってみればよかったかもしれない。 「叶絵ー、郁人くーん!」 遠くから私達を呼ぶ声が聞こえる。 私達に手を振っている波音を見つけて私達も手を振り返した。 「叶絵、なんで浴衣着てないの!?」 「だって動きづらいから」 「女の子の浴衣は男子から見れば何倍も増して可愛く見えるんだよ!?」 「知らないから」 波音は頬を膨らませながら両手をパタパタさせて力説している。 波音も萌音も麻里奈も浴衣を着ている。 私も『着よう』ってラインがきたけど、どうしても着る勇気がなかった。 昔に浴衣を着て、知らない男の人に襲われかけたから。 それ以降、浴衣を見ると恐怖心が湧き上がってくるようになった。 そんな事を言っても皆を困らせてしまうだけだから絶対に言わないけど。 「そろったし、そろそろ楽しもう」 永草くんはそう言うと近くにいる麻里奈に微笑んだ。 なんだ、あれ。 付き合ってんのか? そう思ったけど、この間の永草くんの様子からそんな感じでは無かったように思える。 案の定麻里奈も永草くんの不意の微笑みを受けて真っ赤になって固まっているし。 無意識のタラシって怖いな。 「皆、何食べたい?」 「萌音、りんご飴食べたーい」 「そんなんでお腹膨れるの?」 「さっくんには分からないんだよー。りんご飴は女の子が持ってて『可愛いな』ってなる魔法のアイテムなんだから」 「萌音、彼氏いるよね……?」 「さっくん。お祭り会場ではそんなの関係ないんだよ」 萌音の言葉に驚愕の表情を浮かべる福永くん。 萌音と波音はそんな福永くんを見て笑っていた。 悪魔だな、こいつら。 「麻里奈ちゃん大丈夫?歩きにくかったら教えてね」 「へ、平気だよ。だから、えっと、なんで手……っ」 「ん?はぐれたら嫌だから」 永草くんと麻里奈にいたっては『もう付き合ってしまえ』レベルな事してるし。 ……無法地帯? そう思っていると郁人が笑った。 「皆って本当に面白いね」 「自由だよね」 「でも、今までとは違う感じで心が休まるって感じがする。僕、やっぱりこの学校に来て正解だったな」 「郁人……」 「叶絵、この学校を選んでくれてありがとう」 もう郁人の人生をめちゃくちゃにした、なんて考えてないけど。 それでもこの言葉はとても嬉しかった。 ・
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