花火と墓参り

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皆と一緒に屋台で食べ物を買ったり、金魚すくいをしたり、射的したり……。 こんなに楽しいお祭りは久しぶりだった。 郁人の言葉に私も同意。 今の学校を選んでよかった。 波音と同じ教室で受験出来て良かった。 そんな事を思いながら歩いていると、櫂と莉乃がクラスメイトと一緒に楽しんでいるのが見えた。 その中には道宮さんも当然いて、櫂と親しげに話していた。 道宮さんは櫂の友達なんだから、親しく話しているのなんて不思議でもなんでもない。 分かっているのに、どうしても胸の奥がモヤっとして気持ち悪い。 『櫂は私の彼氏だ』って言えたら楽なんだろうけど、今の私にそれを言う勇気は全くない。 私が道宮さんみたいに明るくて社交的だったら……。 たらればの話をしてもしょうがない。 分かってるのに頭が言うことを聞かない。 「あれ?凛?」 不意に永草くんを呼ぶ声が聞こえて私達は声の方を振り向いた。 そこに立っていたのは知らない男女4人。 「ああ、久しぶり」 永草くんはいつものように微笑むと親しげに話し出した。 「萌音と朔夜もいんじゃん。そっか、お前ら同じ学校行ったんだっけ?」 「萌音と朔夜はともかく、なんで凛まであんな偏差値低い学校行ったわけ?」 「ちょっと!酷いんですけど!!」 「あはは、相変わらず萌音怒った顔も可愛いわ」 3人と親しいって事は、同じ中学の人達だろう。 ぼんやりとそんな事を考えていると麻里奈が青ざめながら私の手を握った。 「麻里奈?」 声をかけると永草くん達の友達が私達を見た。 「うわー、超美人とイケメンいる!凛達の友達!?顔面の偏差値は高すぎでしょ!!」 「うわー、俺もそっち受ければよかったー」 そう言いながら麻里奈に目線が止まる。 そうだ、確か麻里奈も永草くん達と同じ学校だ。 それなら知ってて当然……。 「え?なんで凛のストーカーも一緒なの?」 「……っ」 「キモっ!本気で凛の事追いかけて行ったわけ?マジで引くんですが」 「美人達に取り入ったの?それで凛と仲良くなれた?よく相手にされたよね、あんたみたいな可愛くない女」 麻里奈に対する暴言が止まらない事に固まる。 は……? そういえば麻里奈は永草くんのファンだ。 だからこの学校に来たって萌音が言ってた。 確か麻里奈と友達になったあの日も麻里奈は知らない人に突き飛ばされて……。 最近平和だから忘れてた。 麻里奈は、いじめられてた。 「ちょっと!まりりんに謝りなよ!」 「え?何?萌音、まさか友達にでもなった?」 「やめとけって。萌音と陰キャじゃ住む世界、天と地ほど違うから」 「言いすぎだろ。麻里奈に謝れって」 「朔夜までどうしたの?だってそいつ、きもくない?」 「凛の事ずっと見てるし、ストーカーしてるし。付きまとわれて迷惑してる凛の気持ち考えると許せねぇわ」 ・
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