花火と墓参り

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それは、永草くんが言った事? 麻里奈に付きまとわれて迷惑って。 ……絶対に永草くんは言わない。 だって私がライブを見に行った日、永草くんは本当に麻里奈の事が大事だって分かるような顔してた。 それに永草くんは絶対に人を傷つけるような事は言わない。 たとえそれが親しい友達であっても。 「……本当に、鬱陶しい」 永草くんが不意にそう言う。 その瞬間麻里奈がギュッと私の手を握った。 「大丈夫だよ、麻里奈」 「叶絵ちゃん……」 「誰も麻里奈の事、迷惑だなんて思った事ない。大事な友達だって、私も波音も郁人も福永くんも萌音も、勿論永草くんだって思ってる。私達の事、信じて」 そう言うと麻里奈が私の顔を見てから小さく頷いた。 「ほら、凛も言ってるじゃん。迷惑してるの分からない?」 「相変わらず鬱陶しいよ、お前ら」 「ほらー、凛怒って……え?」 「俺の事ストーカーしてたのはどっちだよ。別に友達になった覚えないのにつきまとわれて迷惑してたんだけど。勝手に友達面して親しげに話しかけて来て、気持ち悪いのはお前らだから。ちょっと人が親切に会話してやったらもう友達なわけ?俺は俺の友達、自分で決めるから。お前らを友達だって思った事なんて一度もない」 いつも穏やかに微笑んでいる永草くんの表情はとても冷たく、前に立っている4人に軽蔑の目を向けていた。 「麻里奈ちゃんは俺の友達だし、気持ち悪いなんて一度も思った事ない。陰キャなんて勝手に決めつけるお前らの神経、どうなってんの?自分達と相いれない人は傷つけてもいいと思ってんの?」 止まらない永草くんの怒りに焦っている萌音と福永くん。 今までこんなに永草くんが怒った事なんて無かったんだろうな。 「はい、じゃあこの話題終わり」 私はそう言うと麻里奈の手を引いて歩き出した。 「その人達、永草くんの友達じゃないんでしょ?だったらもういいじゃん。『知らない人』といつまでも会話してたって面白くないし。せっかくのお祭りなんだから楽しまないと損でしょ?」 「叶絵の言う通りだよ。凛くんも『知らない人』に怒って体力消耗するのは無駄な事だからやめとこうよ」 珍しく郁人も怒ってる様子だ。 私は麻里奈と顔を見合わせて笑った。 「あー、親しげに話してたから萌音達の知り合いなんだと思った」 「違うよーはのはの。萌音『知らない人達』と会話してお腹空いちゃったー」 「凛も『知らない人達』に怒って腹減っただろ?何食べる?」 私達の『知らない人』発言に永草くんが笑う。 それを呆然と見ている彼らの事なんて、私達にはどうでもよかった。 ・
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