花火と墓参り

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沢山歩いて、私達は花火を見るために場所を移動した。 楽しそうに話している皆を微笑みながら見ていると郁人に話しかけられた。 「皆と一緒にいるの、本当に楽しいね」 「そうだね」 「僕、今まで『友達』って言えるような友達、いなかった気がしてたんだ」 突然そう言って眩しそうに波音達を見つめる郁人。 私は驚いた。 「僕がいると何かと都合がいいって、そう言われてるって知ってた。僕を目当てにして女の子が近寄って来るからって。そういうの嫌だったし、本音を言えなくてずっと苦しかったなーって高校生になって思い返してね。 でも、我慢したら叶絵達に被害が及ぶ前に止められるんじゃないかって思ったりして。だからずっと我慢してた。僕にとって叶絵達は大事な幼馴染だし、叶絵達に何かあったら僕は絶対に危害を及ぼした人を許せない。そうなる前に、僕が犠牲になれば全て解決するだろうって勝手に思ってたわけ。 でも、高校生になって、朔夜くん達と出会って、全て景色が変わって。僕が憧れていた景色と生き方、それから友達がこの学校にはあった。本気で笑って、こうやって友達を大事にしてくれる人達に出会えてよかった。 叶絵、僕に『友達』をくれてありがとう」 「郁人……」 「我慢する生活から解放してくれて、ありがとう」 ずっと、私は親戚に言われ続けていた。 『お前といると不幸になる』 そんな事ないって、郁人はそう言ってくれている。 私は意気地なしだ。 弱虫で、逃げてばかりで、自分から解決しようとしない。 私の言葉で傷つく人達がいる事を、郁人達は教えてくれた。 分かってるのに自分が嫌いで止められなくてまた傷つけて。 郁人に笑い返した。 「お互い様」 沢山私は幼馴染たちに助けられた。 何度手を振り払っても捕まえに来る人達。 『叶絵!遊ぼう!』 3人が私を遊びに誘いに来てくれるのが、どれだけ嬉しかったか。 3人が変わらず私と接してくれてどれだけ嬉しかったか。 伝えきれないくらい感謝してるの。 空に舞い上がる花火。 はしゃいでいる波音達。 私は空を見上げながら小さく『ありがとう』とつぶやいた。 ・
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