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家に帰って、私と櫂は二人でご飯を食べた。
それから二人でソファーに座って、手を繋いで窓の外を見ていた。
電気もつけないで、ただただボーっとしたかったのだ。
櫂は私のお願いを聞いてくれた。
何も言わずにただ横に居てくれる。
「……櫂」
「何?」
「明日、お母さんの実家に行くんだ」
「明日なんだ」
「うん。……本当は死ぬほど行きたくないけど、逃げてばかりじゃダメだから」
「大丈夫。莉乃も一緒だろ?それにおばさんも」
「分かってる。でもね、それでも絶対に私はあの家では邪魔者で厄介者に違いないから。親戚が全員来てるわけじゃないって分かってるし、行っても歓迎されないって知ってる。私、絶対にあの家には不要なんだよ」
「叶絵……」
「だけど、私がいつまでも逃げて、泣いて、苦しんでるのは違う。だってそれじゃあ、ずっと負けてるって事だから。要らないなら私だって要らない。失っても怖くないし、痛くも痒くもない。だから、戦ってくる」
「叶絵は一人じゃないよ」
「知ってる。……泣きたくなるくらい、櫂達が教えてくれたから」
もう私は右も左も分からない子供じゃない。
追い出すのなら勝手に帰る。
ただし、めちゃくちゃに全て壊してから。
「……家にも入れてもらえなかったら帰ってくるから」
「そうなったら連絡して。絶対に迎えに行く」
「ありがとう」
クスクス笑うと櫂に慰めるようなキスをされた。
本当は凄く怖い。
逃げ出したい。
いつまでも櫂に甘えていたい。
でも、私が変わらないと何も始まらない。
「櫂」
「ん?」
「今日はこのまま一緒に寝てもらってもいい?」
「いいよ」
「櫂の手、安心する」
「そう思ってもらえてよかった」
櫂の肩に頭を乗せると、櫂も私にもたれるようになった。
このまま、明日にならなければいいのに。
~花火と墓参り~
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