お母さんの実家

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久しぶりに莉乃と一緒に家に帰った。 歓迎してくれたのは案の定お母さんだけ。 相変わらず『この人』は私を見ようともしなかった。 ただ無言で、吐きそうになりながらもお母さんの実家に帰る。 もう二度と来たくないと思った家。 蘇るのは苦い思い出たちだった。 「ただいまー」 お母さんがそう言うと中からおばあちゃんがやって来た。 「お帰り。あら、莉生(りおう)さんも久しぶりね。莉乃ちゃんも大きくなって」 嬉しそうなおばあちゃん。 だけど絶対に私を見ようとはしなかった。 おばあちゃんの中で私は必要のない存在。 無視してくれるならありがたい。 私だって関わりたくないし。 今日はこの家と決別するために来たんだから。 「叶絵」 突然、父が私の名前を呼んだ。 久しぶりに名前、呼ばれた……。 「きちんと立って、前を向け」 相変わらずこの人の口から出るのはそういった小言だけ。 そうやって命令して、言う事聞く人形にしたいわけ? 私は父を睨みつけて顔を逸らした。 「さあ皆、荷物を置いて上がって」 おばあちゃんの言う『荷物』というのは私だろう。 私には家に上がってもらいたくないって。 「叶絵?どうしたの?」 不思議そうな顔で私を見る莉乃。 私は莉乃に笑いかけた。 「ごめん。私、上がれない」 「どうして?」 「おばあちゃんは私が嫌いだから」 そう言うと莉乃が一瞬グッと何かを我慢してからもう一度靴を履いた。 「莉乃?」 「叶絵が上がらないなら私も上がらない」 驚いた私はそのまま固まってしまった。 莉乃が行かないと、最悪の場合莉乃までおばあちゃんに目を付けられてしまう。 それだけは避けたい。 どうしたものかと考えていると……。 「何してんの?」 後ろから声をかけられた。 振り返ると、そこには私の従兄弟が立っていた。 「一翔(かずと)?なんでアンタがここに?」 「母さんが帰省するって言うから。ていうか、莉乃ちゃんも一緒なんだ」 「そりゃ……。ウチのお母さんも帰省するって言うから……」 一翔は莉乃が好きだ。 一目惚れしたって言ってた。 一翔は何かと助けてくれるし、取り持ってあげたいんだけど……。 郁人も大事だし、莉乃の気持ちも分かってるし、私にはどうすることもできない。 ごめんね、一翔。 心の中で一翔に謝って私は口を開いた。 「それが、おばあちゃんに『上がるな』って言われたから私は上がらずにいるんだけど、そしたら莉乃が『一緒にいる』って言い出して」 「ふーん。あのババアの言う事律儀に聞く必要なくない?」 「それもそうなんだけど……」 ・
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