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悩んでいると一翔は何かを思いついたのか「あ」と言った。
「じゃあさ、中庭にいよーぜ」
「何?一翔も一緒に居てくれるの?」
「当たり前だろ?昔から叶絵を助けるのは俺だったじゃん」
「そっか。ありがとね」
私達は中庭にあるベンチに腰掛けた。
無駄に広い屋敷に、無駄に広い庭。
近くには、よく閉じ込められた離れがあった。
「ねぇ、一翔くん。叶絵、親戚に何言われてたの?」
「んー、誹謗中傷的な事。『父親殺しの悪魔』っていうので親戚中から言われてる。最近でも『叶絵を親戚の中から追い出せ』って言われてるみたいだけど、ウチの母さんと父さんが『ダメだ』って圧かけてるから追い出されてない。そもそも、ウチの父さんに喧嘩売ったら仕事失いかねないから」
一翔のお父さんはお金持ちで、他のいとこもコネで入社してたりしている。
そのため強く言えないんだろう。
「叶絵のせいじゃないのに……」
「莉乃や一翔が分かってくれてるだけでもいいよ。皆が分かってくれなくても、私を分かってくれる人が一人でもいるだけで心強い」
そう言うと莉乃が泣きそうになりながら私に抱き着いた。
「それにしても、よくここに来ようと思ったな。最近ずっと来てなかったじゃん」
「あー……、まあ、お母さんに誘われたんだよね」
「え?叶絵を近づけさせようとしなかったおばさんが?」
「そういえば……。なんでお母さん、私を誘ったんだろう?」
そういえばそうだ。
お母さんは私が親戚から嫌がらせを受けている事を知っている。
おばあちゃんやおじいちゃんに嫌われてる事も知ってる。
それなのに、どうして私を誘ったんだろう。
不思議に思っていると莉乃が口を開いた。
「あのね、叶絵。叶絵はお父さんが嫌いかもしれないけど、今日はお父さんを信じてもらいたいの」
「え?」
「叶絵、お父さんが叶絵に言ってきた言葉を思い出して」
そう言われて、思い出したくないけど思い出す。
『もっと女の子らしく振るまえ』
『もっと女の子らしく話すように』
『莉乃みたいになれば、きっと……』
「あれ……?」
私、あの人に否定された事あった?
自分の中で『私は莉乃にとって悪影響だ』って言い付けてた。
それはあの人に言われたわけじゃない。
あの人の言うような人間になるのが嫌で、人形にされたくなくて反発してた。
だけど……。
「叶絵、無意識かもしれないけど、歩き方とか凄く綺麗なんだよ。それに話し方とか品があるし、美人が溢れてるって感じで。叶絵はいつだって否定するけど、それってお父さんが言った事が出来てる自分を認めたくなかったんでしょ?」
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