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「どうしたの?麻里奈」
「あ……。ちょっと、皆と離れるの寂しいなって思って。私、叶絵ちゃん達が声をかけてくれたからクラスの子とも話せるようになったけど、他のクラスではやっぱり地味で話しかけてもらえないって言うか。嫌味とか言われるし、怖いなって思っちゃって」
いじめられた経験のある人は臆病になる。
私だってそうだ。
痛い事も苦しい事も誰だって経験したくないに決まってる。
私は麻里奈の手を掴んだ。
「大丈夫。チームは4つだけだし、麻里奈一人が違うチームって事はないよ。私達の誰かとは絶対に一緒になる。なんなら永草くんと同じかもしれないよ」
「え!?」
真っ赤になって両手で顔を押さえる麻里奈。
あ、これ、永草くん夏休み中に麻里奈に何かしたな。
「たとえ違うチームになっても私達が友達って事に変わりはないから。何かあったら私達に言えばいいよ。絶対に助けるから」
「叶絵ちゃん……。ありがとう」
いつものように笑ってくれる麻里奈に私も笑い返す。
こんなにいい子をいじめる奴の気が知れない。
先生がやって来ると、先生は体育祭のチーム編成について話した。
「この箱の中に、赤、青、黄色、緑の色のボールが入ってる。全員一個ずつ引いてくれ。手に取った色のチームが体育祭でのチームの色だ」
前から回された箱の中に手を突っ込んでボールを掴む。
取り出した色は『赤』だった。
「叶絵、何色だった?」
郁人に聞かれてボールを見せる。
「あー、僕たち別れたね」
郁人が持っているボールの色は青だった。
郁人とは別になるのか。
……正直、手ごわい郁人と一緒になりたかった。
郁人はぼんやりしているけど、基本的になんでも出来てしまう。
スポーツだって例外ではない。
王子様と言われても違和感がないほどに運動神経は良い方だ。
勝負事はどうせなら勝ちたいではないか。
「あ!郁人くんと同じだー!やったー!」
「俺、黄色だー。郁人とも叶絵ちゃんとも違うんだけど、さみしー」
「残念、朔夜。ボコボコにしてやるから」
「波音怖すぎない?」
ここの3人とは離れたんだ。
何となく寂しい気持ちになっていると麻里奈と永草くんがやって来た。
「あ、叶絵ちゃん同じだ」
永草くんはそう言うと笑顔で赤色のボールを見せた。
麻里奈は青色を持っている。
「波音ちゃんと郁人くんと同じだ!良かった……」
「よろしくね、麻里奈!」
「よろしく、麻里奈ちゃん」
安心したように笑う麻里奈だったけど、永草くんと同じでない事に少し悲しそうだった。
代わってあげれるなら代わりたいけど……。
多分それはダメだろう。
心の中で麻里奈に謝ってボールを見つめた。
「萌音、黄色だったー。誰か黄色いるー?」
「俺ー!」
「さっくんだ!よろしくねー!」
楽しそうにはしゃぐ二人。
先生は今日の放課後にチームミーティングがあることを伝えていた。
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