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放課後。
私と永草くんは皆と別れて赤チームが集まる空き教室へ来ていた。
中には違うクラスの人達や先輩たちが数名いた。
なんかめっちゃ注目されてるような……。
まあ、永草くんはバンドしてるし、動画サイトでも人気あるくらいの有名人だ。
そんな人と一緒だと目立つに決まってるか。
「叶絵ちゃんは相変わらず人の目を引くね」
「え?永草くんもでしょ?」
「ふふっ、じゃあ俺達どっちも人目を引いてるんだ」
「あんまりジロジロ見られるの好きじゃない」
「無視しとけば問題ないよ」
私達はとりあえず近くの椅子に座った。
「そういえば叶絵ちゃん、夏休み中に何かあった?」
「え?」
「何だか雰囲気が変わってるから」
「あー……。まあ、家族と色々あって。郁人達との関係についても、逃げるの辞めたって感じ」
「それは良かったね」
「色々心配してくれてありがとう、永草くん。それなりに強くなれた」
「前から叶絵ちゃんは強い子だよ。逃げている理由は分からなかったけど、これで郁人くん達が安心出来ればいいね」
永草くんは私を本当に心配してくれている。
それはずっと分かってた。
本当にいい人だな。
永草くんと話していると教室に櫂と道宮さんが一緒に入ってきた。
楽しそうに会話しながらクラスメイト達とも話している。
本当にあの子は人気者だな。
先輩とも仲いい人が居るみたいだし。
てか、あれ?
もしかして私、櫂と道宮さんと同じチーム?
二人も私達に気が付いて近くにやって来た。
「叶絵ちゃんと永草くん!同じチームなんだ!一緒に頑張ろうね!」
「よろしくね」
笑顔で永草くんはそう言ったけど、私は戸惑ってそんな事を返す余裕がなかった。
櫂と同じは嬉しいけど、道宮さんと一緒は嫌だなんて。
そんな酷い差別的なことを考えてしまう自分に嫌気が差す。
「郁人は?」
櫂にそう聞かれてハッとして、いつものように答えた。
「青だった」
「ふーん。莉乃は緑だった」
「うわ、莉乃大丈夫かな」
「運動神経悪いし、他のチームメイトに迷惑かける未来しか浮かばない」
「ちょっと櫂、それ莉乃に絶対に言わないでね」
拗ねて面倒な事になるのは目に見える。
私はため息をついた。
赤チームの担当の先生が教室に入って来る。
出る種目を決めないといけないらしい。
渡された紙を見て固まる。
だってこれ、男女混合でやるって分かってるけど……。
「合コンみたいな内容だね」
道宮さんが困ったようにそう言った。
二人三脚とかリレーとか、従来の体育祭の種目はもちろんある。
その中に、異性限定借り物競争とか、手つなぎリレーとか……。
「この『お姫様救出ゲーム』って何だろうね?」
永草くんが指さした競技を見て道宮さんが渇いた笑みを浮かべた。
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