第一章

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 森の中で宇宙船を発見してから一週間が過ぎた。俺たちは発見して以降森には行っていなかったが、あの宇宙船が誰かに見つかったという話は一度も無かった。つまり、あの船を知っているのは俺とレイとセイジの三人だけという状況だった。  俺は学校の教室の窓際の席であの宇宙船のことを考えながら、秋晴れの空を眺めていた。そこでは歴史の授業が行われていて、第二次世界大戦が、冷戦が、と教師は言っていたが、今から一世紀も前の出来事を説明されても俺にそれが同じ星で起こった事だとは実感が湧かなかった。俺は仕方なしに時代遅れのノートと鉛筆で板書をした。今の時代、都市部の学校ではタブレット端末で全ての授業を行うというのに、俺たちの学校は今もなお授業を紙で行なっている。そういった些細なことが重なって、俺はこの日々が退屈でしょうがなかった。  あの宇宙船が有れば、この退屈な日々から抜け出せるのだろうか。この一週間で気がつくと俺はそんなことを考えるようになっていた。船さえあればどこにだって行くことができる。あの船で旅に出れば人生が楽しくなるような気がしていた。 「ねえ、これを見てよ! 」    放課後、俺と一緒に帰ろうとしていたセイジの前にレイが急いだ様子でやってきた。手には紙の新聞を持っている。
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