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4.生活基盤を手に入れろ(敏也)
敏也は博雅鬼悠真の助けもあって、ようやく鬱蒼とした森を抜けることができた。
とはいえ、実のところは敏也の要望で、直ぐには樹海から出ずに、二、三日の間、留まったのだ。
博雅鬼の風力を頼れば、この広大な樹海すらもひとっ飛びで越えられる。
けれども、敏也が博雅鬼を従えた時にはまだ、女神から与えられた力のほんの僅かしか使いこなせていなかった。それでは負んぶに抱っこ、主として形無しだ。
だから、街に出ても困らなくて済むよう、なるべく博雅鬼悠真の負担にならぬよう、基本的かつ最低限の力の使い方を乞い教えてもらっていたのだ。
あとは自分の努力でいくらでも何とかなるはずだ。
そうは言うものの、訓練のありさまは情けないものだった。
あまりにもの自分の要領の悪さに、思わず前世を思い出したくらいだ。
けれども、博雅鬼悠真は半ば呆れながらも、敏也が安定して技を使えるようになるまで、辛抱強くじっと見守ってくれた。
そのあたりはかつての悠真と同じだった。
そんな懐の深い優しさに、偽りとはいえ仲の良かったかつての自分たちの姿を重ね、あれが本当の好意や友情からくるものだったら良かったのにと、胸の奥がキュッと摘まれた思いだった。
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