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それでもこの博雅鬼悠真とかつての悠真とは別ものだ。
彼は前世の敏也のことを知らなければ、女神から遣わされた使徒の眷属として任務を全うしているだけなのだ。
お門違いにも、それがとても寂しく思えた。
(僕は悠真に……、この博雅鬼に……、一体何を望んでいるのだろう?)
だが、明らかに悠真との違いもあった。
博雅鬼は人である敏也とは異なり、睡眠を取らなくとも良い身体なのだという。
その違いは自分が見知っているあの悠真ではないのだと絶望するとともに、助けでもあった。
敏也たちが野宿するにあたって、博雅鬼悠真は一人「寝ずの番は俺に任せておけば良い」と買って出てくれた。
おかげでこの世界に来てはじめて、安心してぐっすりと眠ることができた。
どんなに有難かったことか。
どんなにこの存在に心身ともに助けられたことか。
それ以上に、いかに悠真という存在に依存していたか。
そんな風に博雅鬼と出会ってから幾度となく似ている容姿や態度に悠真の面影を求め、不相応な思いまで押し付けてしまいそうになる自分に戸惑い、今度は明らかな差異を感じては冴え冴えと冷静な自分に立ち返った。
これは悠真じゃない。
一つの個性、博雅鬼として見なければ……。
人知れず悩ましい思いに蓋をした。
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