5.なるべく目立つな(敏也)

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 そんな風に目立たぬようにと言ったのは博雅鬼の方だったのに、冒険者ギルドで能力検知の水晶に気だけを送る際、周りが騒然となる数値を叩きだしていた。  どうも博雅鬼は力のコントロールが苦手なようだ。  確かに膨大な魔力を僅かに抑えるのは至難の業で、抑えたつもりがSランク判定となるのも分からなくもない。いきなり偉人レベルのSS、SSS、USランクに躍り出なかっただけ、堪えた方だと思う。 「すまない。人型を取っている時は力を出しにくいものなのだが……」  肩を落とし、申し訳なさそうに敏也に謝る博雅鬼の姿は何だか可愛らしく、容易に絆されてしまう。  けれども、得た魔石などを換金する際には、これくらいのランクがあった方が却って売りやすいのかもしれない。  職業Sランク魔導師として活躍する博雅鬼の姿を思い浮かべれば、誇らしくて頬が緩んだ。  そういう敏也はコントロールの才はあるようで、Cランク猛獣使い(テイマー)となった。  また、職業をテイマーとするにあたって、事前に博雅鬼と相談した上で決めた魔獣二体の登録もした。  アイテムボックスを人前で使うのを避け、予め所有する中で低レベル、かつ生活に役に立つ魔獣を取り出し連れ歩いていたものだ。  そうして治癒成分を分泌するスライムと不織布の繊維を生む植物魔獣が、敏也の表向きテイム魔獣となった。  その後、ここでの判定を持って商工会ギルド登録も済ませ、敏也たちのこの世界での生活基盤が無事整った。
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