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「二手に分かれたものの、問題はなかったようだな。形状といい、やはりここ自体が神獣の領域みたいだな」
「うん」
「どうだ? この先に何か感じるか? 匂いは強くなってきているようだが」
「うん、腕が引っ張られる感覚が増してきた。あの時と同じなら、女神の”キー”があると思う」
「そうか。ならば、行こう」
博雅鬼は足元に風雲を作ると、連れていってやるから乗れと言わんばかりに敏也に向かって手を差し出した。
敏也はその手を受け取り風雲に登ると、博雅鬼の背中に腕を回して、しっかりとしがみつく。
獣人といえど敏也と同じように血が通っている。密着したところから博雅鬼の体温が伝わってきて心強い。
そのままどんどんと奥深く下っていくと、だだっ広い空洞に出た。底部は琥珀色の水が張り、中からぐつぐつと気泡が湧き起こっている。
甘い香りを伴っているから、一見炭酸飲料のようで美味しそうなのだが、ここに落ちたらきっとタダでは済まないだろう。身が溶けて、敏也もこの炭酸飲料の一部になってしまうかもしれない。しがみつく手にキュッと力をこめる。
すると、博雅鬼も敏也を慮ってか、支える腕の力を強くする。
「どうだ? どちらの方向だ」
「右の奥」
敏也の指示に従い、博雅鬼が舵を取る。
すると、岩が隆起してテラスになったところが現れた。そこに降り立つと、中央に祭壇があり、厳重に結界を張り巡らされ中に”キー”があった。
「さすが使徒だな。こう容易く”キー”のあるところまで、侵入できるとは」
「こんなものじゃないの?」
「違うな。普通は門番の神獣が目覚めて、荒れ狂う」
確かに敏也が初めて”キー”を手にした時も、使徒である自分はダンジョンの最下層まで容易く行くことができた。一方、博雅鬼は”キー”を護る神獣と交戦していた。
鍵場にも神獣にも、使徒か否かを識別する力があるようだ。”キー”は各地に散らばっているとはいえ、やはり敏也が集めること自体はそう困難ではないようだ。
「じゃ、いくよ」
敏也は初めて鍵を取り込んだ時と同じく、流れるガイダンスに従い、”キー”に手を翳す。
すると、”キー”は発光しながら、敏也の指先から伸びた蔦を辿り、この鍵の定位置と思われる鍵穴へとしっぽりと納まった。皮膚には鍵印と共に「Ⅱ」の数字が刻まれた。
「神獣、ありがとう。確かに”キー”を受け取ったよ。だけど、引き続きこの村のこともよろしくね」
岩肌に触れると、「任せておけ」とばかりにそこがポコポコと波打った。
――これで二つ目の”キー”が集まった。
敏也たちは一、二日、この村で羽根を伸ばした後に、再びブキ・パントランへと戻っていった。
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