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そんな感じである程度は要領を得て、上手い具合に能力とも人や魔獣とも付き合ってはいるのだが、取り分け極東にある国の殿様には未だに手を焼いている。
以前、博雅鬼と共に極東を訪れた折りに、敏也はたいそう殿様のお眼鏡にかなってしまったようで、しつこく結婚を申し込また。
どんなに断ろうとなかなか諦めてくれない殿様に、博雅鬼も目から光線を出して威嚇してくれたのだが、「ならば我をテイムしてくれても良いから、是非ともこのままずっと其方の傍にいさせてくれ」と縋りつかれた時には、あわや殺人事件に発展しそうだった。
これ以上博雅鬼に罪を重ねさてはならないと思い、殿様から全速力で逃げたのだけれども、殿様は今も潤沢にある私財を投じて敏也たちの行方を捜している。
(あの殿様のせいで、あの辺りにある”キー”を回収できないんだよね。困るよね)
”キー”集めにも時の制限がある。それがある以上、いつまでも手をこまねいているわけにもいかないのだが、あそこはとんだ鬼門だ。
今度、殿様に「僕には博雅鬼という恋人がいるから、アナタの入り込む余地は一寸もありません」と宣言してみようか。
けれども、そんなくらいでは到底めげてくれそうには思えない。
もっと過度で決定的なスキンシップを博雅鬼と殿様の面前で披露すれば、少しは納得してくれるかもしれないのだが、それには博雅鬼の承諾がいる。いくらテイムしているとはいえ、博雅鬼が望まないものを命令することは躊躇われた。
何よりも博雅鬼の敏也に対する思いや自重する姿を知っているからこそ、そんな軽はずみなことはできない。
極東については、あの殿様にもそこそこの固有能力があることも質を悪くしているのだが、敏也が完全に気配まで消せるような透明人間能力でも得るまでは保留だ。
そんな風に博雅鬼と過ごしたこの七年間は、喜びや涙でいっぱいに詰まっていた。
はじめて”キー”を体内に取り込んだ時は、やや理不尽ともいえる使命に戸惑いはしたが、博雅鬼と周る旅はどんな過酷な地でも一緒に過ごすのが楽しくて、今では役得だとさえ思っている。
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