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「それでも、今のこの状況はマズいよな……。兎に角、魔物が襲ってきてからじゃ遅い! 来る前に何とか魔法の1つでも…、って、本当、何とかしなくちゃ!!」
敏也は急いで自分のステータスを開くと、書かれている内容を確認する。
面前に投影されたステータスはゲーム画面同様にテキストボックスになっている。左端にはご丁寧にも敏也の顔写真も載っていた。
女神が顔はそのままでと言っていたのは嘘ではなく、女に間違えられてもおかしくない気弱そうな自分がこちらをじっと見つめていた。
(前と大して変わらぬ容姿で、はたしてこちらの人々に受け入れてもらえるのか…)
不安になった。ただこちらの世界でも違和感がないようにか、濡羽色だった髪は銀色に輝き、こぼれそうな瞳は青く澄んでいて、薄幸そうだが少し明るい印象になっているようにも思えた。
けれども、ステータスを順番に下へと読み進めていくと、「レベル1」「職業:テイマー」など適当な設定がついているものの、破格な恩恵が並んでいて心が湧きたった。
与えられた属性は全てに素質があり、能力も魔力探知・神眼・ちょっとした固有魔法から錬金・生活に必要なスキルに至るまで、あらゆる能力がレベル1とはいえ既に開眼していた。更に、敏也が女神にお願いした唯一の願望も、神からのご加護の欄に「愛され体質(サキュバスクラス)・スピード成長・消費HP無限大」として記されていた。
「本当、お決まりなチートさだな……。僕を勇者にでもするつもり? しかも、サキュバスクラス?」
気弱な敏也が勇者になる姿なんて、微塵にも想像がつかない。
けれども、有り余るご加護に、第二の人生が明るいのも確かだ。
ほっと胸をなでおろしたのも束の間、後ろのの茂みからガサゴソと不穏な物音がした。
恐る恐る振り返ると、そこには豚の形相をした大男が立っていた。
「…っぅ、オーク!!」
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