10.混沌、そして最後の手がかり(敏也)

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 敏也は呼び出したドラゴンの背中に飛び乗ると、空高く飛翔した。  この高さからなら、かなり遠くまで見渡せるはずだ。  案の定、神獣たちのいる所々から魔力の放出を感じた。敏也が思っていたよりもずっと性急に変異は起こっていたようだ。  敏也はアイテムボックスから、ありったけの魔獣を呼び出すと、各地に放った。こんな状況下だというのに、みんなそれぞれの役割をもらって生き生きと嬉しそうだったのは幸いだ。  そうやって赴かせた魔獣たちがなるべく無事に敏也の元に帰って来てくれさえすれば良いのになと願う。  そういう敏也も上空でただ手を子招いているわけではなかった。  遠隔で魔獣たちを支援しつつ、更に自らも各地へ赴いて、人々がちょっとやそっとでは立ち入ることができないような重厚で強固な結界を神獣たちの周りに張り巡らしていった。  流石に女神から底なしの魔力量を授けられているとはいえ、博雅鬼を従えた時よりも遥かに膨大な魔力を消費する。  この世界に来てからというもの、ひ弱な敏也もそこそこの体力がついたものだが、(オビタダ)しい魔力消費に器の身体が追いつかず、始終眩暈と吐き気に悩まされた。  それでも必死に食い止めている魔獣たちを思えば耐えられる。血を吐く思いで魔力を行使し続けた。 (かなりの持久戦になりそうだ。終わりが見えない)  おそらく最後の”キー”を見つけない限り、この攻防戦に終わりは来ないだろう。  けれども、その最後の”キー”は一体どこにあるというのか。  その辺にあるとしたら、敏也たちが情報を掴み切れていないだけで、人だかりができているはずだ。  そう思い、注意深く各地を見て回ったが、敏也が知る神獣たちのところ以外に人だかりはできていない。  そうこうするうちに博雅鬼が攻防している溶ける湖の神獣以外の結界を張り終えた。  いざ、博雅鬼の元に引き返そうと右旋回したところ、みなの邪悪な煩悩に耐えかねた大地に、大きな亀裂が縦長に入った。  その裂け目からは灼熱の炎と黒い煤が立ち上がり、多くの人々がその裂け目に呑み込まれていく。  まるで地獄絵図のようだった。    だが、その亀裂を辿っていくと、博雅鬼のいる溶ける湖へと一直線に延びていた。 「もしや…………、博雅鬼(ユウマ)!!」
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