10.混沌、そして最後の手がかり(敏也)

4/4
前へ
/57ページ
次へ
 嫌な予感がする。不安で胸が押し潰されそうになりながらも、急いで来た道を戻る。 「博雅鬼(ユウマ)……」  どうか無事でいて欲しい。  そもそも、突然どうしてこんなことが起きてしまったのだろうか?  今までだって、少しずつだが煩悩は溜まっていた。それが……。 (何故? 今までこんな気配はなかったのに)  穏やかでのんびりとした世界だった。予兆すらなかった。  けれども、不自然な変化には必ずキッカケとなるものがあるはずだ。焦る気持ちとは裏腹に冷静に物事を見つめ直す。  すると、あることに思い当たった。  異変が生じたのは、よくよく考えれば最後から二つ目の”キー”を取り込んだ直後からだ。あれがこの異変の合図となったのは間違いない。  すると、意図して起きた必然悪なのだろうか。それならば、女神が敏也たちに与えた最後の試練なのに違いない。  罪深い博雅鬼よ、共に乗り越えなければならない。  だが、乗り越えた先には必ず救いがあるはずだ。  そう確信したなら、なぜ亀裂が博雅鬼の元へと延びているのか、なぜ今まで最後の"キー"の手がかりすら見つからなかったか、なぜ最後の鍵留だけ大きさが違ったか、全てのことがパーツがはまるかのようにすっきりと納得がいった。 (ああ、博雅鬼(ユウマ)……)  こうしている間にも地獄へと突き落されてしまうかもしれない。 (ああ、僕は博雅鬼と離れるべきではなかったのか?)  そう思ったところで後の祭りだが、あの場を離れ、他の神獣の元に向かわなければ、皆殺しにあっていたかもしれない。博雅鬼がこうなると分かっていたところで、敏也に他の選択の余地はなかったのかもしれないが。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

200人が本棚に入れています
本棚に追加