13.エピローグ~門出~(敏也)

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13.エピローグ~門出~(敏也)

 扉を開けてから、二年が経った。  人間に戻ることのできた悠真も、魔獣だった時に二歳、人間に戻ってからのこの二年で二歳と齢を重ね、ようやく今日成人する。  元々身長は敏也よりも高かった悠真だが、この二年で見た目も随分と雄々しくなり、敏也との五歳差なんて呆気なく縮められてしまったような気がする。  そんな悠真の成人祝いを心ゆくまでしてあげるつもりだ。  敏也はテイム魔獣たちを従え、朝から畑に出かけてきた。  そう、まだ女神から頂いた"愛され上手"のご加護も身に余る能力も健在だ。  ただ以前とはテイム魔獣たちとの付き合い方が少し変わった。従属させて必要な時に取り出すのではなく、彼らも個々の生き物として良い距離を保ちつつ共同生活を送る仲間という位置づけになった。  というのも、あの混沌とした暴動期に魔獣たちが与えられた役割を生き生きと全うしようとする姿を見て、彼らも一つの生命、これぞ本来あるべき姿なのだと恥じ入ったのだ。  だからこそ、ちゃんと距離感を示した上で彼らとも個々で付き合っている。  もちろん、ヤキモチ妬きの悠真が時々拗ねて不機嫌になることはある。  けれども、心では絶対的なパートナーは自分以外にはないこともよく心得ていてくれるから、僕らがお互いの心を見失うことはもうない。  だから、敏也からすると、自分たちと魔獣とは"二人と愉快な仲間たち"といった感じだ。  そんな風に日々仲間や日常の糧に感謝し、慎ましく生きている。 「我ながら天才じゃない? 絶対に農夫の才能があるよね!」  精魂込めて作った愛しい収穫物を手に、自画自賛する。  けれども、この二年、人たらしさを大いに活用して農業のノウハウを手に入れ、試行錯誤で改良に改良を重ねた敏也の作物は、他人の目から見ても良質で立派な出来栄えだった。  今では市場に卸しても他と遜色ないどころか、一級品で売買されている。  まさかのスローライフ満喫で、前世の日本だったら受験、大学、就職と、考えられなかったのんびりとした暮らしを送っている。異世界に来て予定外なことばかりだったけれど、こんなのも悪くない。 「みんなも、ありがとう。みんなの助けがあっての、この出来栄えだもんね。きっと今日の取れ分も美味しいよ」  魔獣たちは一様に嬉しそうに頷く。 「だけど、そろそろ料理の支度もしないといけないし、家に戻ろうか?」  籠いっぱいに収穫した手塩に掛けて育てた色とりどりの野菜や天然の山菜の運搬も、みんなで分担する。  アイテムボックスはあるものの、仲間意識にはこれが一番だ。
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