1.転生(敏也)

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 急いで魔物のステータスを確認する。レベル20。いくら敏也が神に破格の恩恵を受けたとはいえ、まだレベル1の自分が立ち向かうには格上過ぎる。  気圧(ケオ)され後ずさるものの、背中にトンと木の幹が当たった。異世界に転生して早々、万事休すだ。 「俺、オーク。男はみな殺して、女は犯す。オマエ男だけど、可愛いから犯す! 俺の種、たっぷりと植え付ける。孕むまで犯す!犯しまくる」  言うが早いか馬乗りになってくるオークに青ざめる。下肢の付け根で存在感を示す凶器には背筋がいやと凍った。  誰からも好かれたいと望んだのは自分だけれど、こういう好かれ方をしたいとは思っていない。 「ええい、キモい!」  荒い息で迫りくオークに無我夢中で拳を振り上げる。ほとんどが空を舞うだけだったけれども、そのうちの1つが何とかオークの右面にクリーンヒットした。  打撃強化をしているわけでもないのに、オークは軽く2,3m後方に吹っ飛んだ。  けれども、渾身の一撃も決定打にはならなかったようだ。オークはスクリと起き上がると、より一層目をハートマークにして敏也を見つめてきた。 「マイ・ハニー♡」  ただ前とは違うのは、無理に敏也を襲おうとする気がなくなっているようだった。居ずまいを正してこちらを窺うさまは、まるで忠犬のようだ。  合点がいかず首を傾げていると、派手なアラート音と共に面前にテキストメッセージが流れた。 「ステイタスが更新されました。誘惑・レベル2」 「えっ…」 「オークは敏也をとても気に入りました。テイムされることを希望しています。このオークをテイムしますか? YES/NO」 「ええっ!」  もちろん「NO」だ。こんな性欲の塊みたいなヤツをテイムして、四六時中付きまとわれたら密室はもちろん、屋外でも落ち落ちと寝ていられない。 (お、お、押し倒される!!!)  もしかしたら昼間も油断ならないかもしれない。 四六時中尻を狙われ続けるなんて御免だ。 (だいたい転生ものといえば、男じゃなく女の子ハーレムが出来上がるのが定番だろ? それなのに寄りにも寄ってオークの雄に気に入られるなんて……、最悪だ!)  けれども、いくら「NO」の表示をタップしようとしても反応しない。焦って繰り返せば繰り返すほど嫌な汗が噴き出てきた。  それを不思議に思ってよくよく画面を見ると、何故か「NO」の部分だけが暗点していた。もしかすると不具合か設定ミスで「NO」が選択できないようになっているのだろうか?
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