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2.与えられた使命と再会(敏也)
「魔法の使い方も知らない僕を、なんでいきなり森の中に転生させるかな? 大事には至らなかったけど、遭うもの、遭うもの………、魔獣しかいない!」
敏也は半べそになって悪態をつく。それだけでは飽き足らず、テイムした魔獣たちをねめつけてみたが、彼らはみな親衛隊よろしく敏也の後を喜々としてついてくるだけだ。ちっとも心は晴れない。
敏也が異世界に転生して早4日が経った。未だに魔法の使い方はろくに分かっていないというのに、既にテイマーした魔獣は優に100体を超える。
オークの”名無し001”にはじまり、触手で手足を拘束してきた植物魔獣5体。服を溶かすスライム68体、ドーベルマン顔をしたケンタロス7匹、獰猛で頭が悪いものの変化能力を操るゴブリンが18体。筋肉隆々なウルフマンが1体に、風が吹いただけでも木端微塵に崩れ落ちる死霊スケルトンが23体。
どれもが変態じみていたり、役に立ちそうもないモンスターばかりだ。
(そうだよ。植物妖怪に捕まった時には、もう直ぐで………)
欲望に焚きつけられた”名無し001”に主従を超えた関係に持ち込まれそうになった。更に言えば、スライムに服を溶かされた際には、オークはもとよりケンタロスやウルフマンのアソコまでもが猛々しく天を仰いでいて、すうっと血の気が引いた。
それに、あの自動認証機能も解せない。敏也の意に反して、どんどん余計なものをテイムしていく。
そんな何が起こるか分からない異世界生活に戦々恐々とし、とても順応していけそうにないと思う敏也だが、今は植物魔獣が出した魔力を含んだリネンでできた洋服に身を包み、変態じみているとはいえ一応従順で屈強な魔獣が共にいる。少しずつだが着実に転生した当初よりも状況が上向きになっているのも確かだ。
(どうせなら火を噴くドラゴンとか、毛並みの綺麗な神獣とか、格好良いモンスターがテイムできると良いんだけどなぁ~~)
鬱蒼とした森林の間を縫う小道を進んでいくと、突如、視界が開けた。すると、敏也たちの目の前にはゴツゴツと巨大に聳え立つ岩山が現れた。
岸壁まで近寄り、その頂きを見上げても、雲に覆われていて見ることができない。
だが、その周囲をぐるりと見渡すと、右側上方。ちょうど敏也が前に生きていた現代日本社会でいうところの二階くらいの高さだろうか。その辺りに、岩山の中へと通ずるだろう入り口がポカリと開いていた。
「ゲームの世界でいうところの………、いわゆるダンジョンってヤツ?」
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