2.与えられた使命と再会(敏也)

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 半ば諦めの境地で魔獣たちに担がれ揺られること小一時間、最下層の扉までたどり着いた。しかも、知らず知らずのうちに自動認証された魔獣が数100体、膨れ上がるように増えていた。  愛され体質サキュバス級、HP無断大でなかったら、そのテイムだけで敏也はあっけなく散っていたところだろう。  けれども、こうしてたどり着いた最下層の扉だったが、開けようにも流石の魔獣たちの体当たりでも、スキルPでも、ビクともしない。  ここに来て手立てがなくなったのかと、敏也自ら手で触れると大きな穴が開き、吸い込まれるように魔獣共々中に取り込まれてしまった。 「えっ! もしかして歓迎されてる? じゃない、ピンチ到来ってヤツ? 簡単には出れそうにないし、ラスボス的なヤツと闘わなきゃいけないんじゃないの!!」  そう察して一様に慄いてみたのだが、一向に攻撃される気配がない。それどころかラスボス的な存在の気配すらない。 「ああ、それこそもう一回、魔力探知をしてみるか。魔力探知っ!」  やはりラスボス的な魔力は感じられない。先ほどと同様に芳香が溢れ出す中央の水晶に異様な魔力を感じるだけだ。  恐る恐る近づくと、脇に”押してください”と言わんばかりのスウィッチがあった。罠かもしれない。そう思ったが、これを押さなければ先に進むこともできない。覚悟を決めて触れる。  けれども、杞憂だったようで、面前にキャプションが現れた。異世界ものでありがちなベタなケース。読めるはずもない異世界語は馴染みのある日本語だった。 「で、なになに? 今回のクエストは初回限定サービスの超イージーモードとなっています。予め全知全能の神が把握している”キー”の在処まで導きましたので、下記の手順に従って”キー”を取得してください。なお、これからあなたは以下のマップを元に、この世界に散らばった同様の”キー”を全て集め切り、最果てにあるエネルギー源泉の扉を期限内に開いてください。もしこの強制ミッションに失敗すると、この世界の魔力が尽き、世界もろとも全てが消滅します。全てはあなたの細肩にかかっています。頑張ってください。…って、えええっ!」  女神から何も聞いていない。いや、微かに聞いた「役に立ってもらうわよ」はこの強制ミッションをこなすための言葉だったのかもしれない。  ”タダほど怖いものはない”というが、まさにこの状況がそうなのに違いない。  仕方なくマップを確認してみるが、鍵の在処も、最終目的地の源泉を示すマークもない。何の変哲もない地図だ。  一体からして”キー”はいくつあって、どこにあるのか。源泉にはどうやってたどり着けば良いのか。有効期限はいつまでなのか。不明瞭過ぎる上に強制力のあるミッションを押し付けられ、しばしの間茫然となる。  けれども、何もせずには始まらないし、終わりもこない。今は与えられた運命を享受するしか、敏也がこの世界に存在する意義が見い出せなかった。  気を取り直し、先ほどのキャプションの続きを目で辿る。 「”キー”の取得の仕方。”キー”は絶対障壁に覆われており、使徒以外が呪文を唱えても獲得することはできません。また、”キー”の元には門番となる神獣が配されていますので、闘うか仲間にするか選択してください。って、あれ? 神獣っている?」  キョロキョロと見回すも、やはり神獣らしきものはいない。 「まっ、良いか。で? 使徒の呪文はっと……、これか!」
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