想ゐで話

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私は職員室に通いながら、教室の後ろでじっとしているのが日課になりつつあった。他の生徒の邪魔はしないという約束をフィラと交わして、私は授業の様子を観察する様になった。 最初のうちは、勉強もせずに黙って後ろに座っている私の事を気味悪がる子達もいたが、数か月も経てばその状態に慣れていった。 そして、私が学校の勉強に完全についていけなくなった頃に、フィラは両親を呼び出して面談を開いた。 「サラちゃんは、学校に置いておけません」 「もう少しだけ、機会を与えてください」 「彼女がこの場所で学ぶ事はありません」 その言葉を聞いた父ちゃんが、顔を真っ赤にして立ち上がった。 「なんだと!ウチの娘を馬鹿にしてるのか!」 私が学校に通い始めてから、ずっと温厚だったフィラが声を荒げた。 「結果が出ないとわかっているのに無理強いさせる事が、どんなに残酷な事なのかがわからないんですか!」 彼女の気迫に、父ちゃんは負けじと怖い顔で睨み付けたが、フィラはそれにも動じずに真っ直ぐ父ちゃんを見つめた。 「私が彼女と会話を交わした中で、気が付いた事がいくつかあります。参考までに」 「ふん、こんなもの」 父ちゃんは、フィラが差し出した紙を読まずに破ろうする。それを、隣に居た母ちゃんが腕を掴んでやめさせる。 「やめな。破り捨てるのは、人として最悪だ」 父ちゃんはみたくもないといった様に、フィラが書いた紙を母ちゃんに渡した。母ちゃんは黙って紙を読み始め、しばらくしてからフィラに向かって深々と頭を下げた。 「こんなにキチンとこの子と向き合ってくれて、ありがとう」 フィラは、下唇を噛みしめながら悔しそうに俯いていた。やがてゆっくりと口を開いて 「ごめんなさい、私の力不足です」 頬を涙で濡らした。その日から数日も経たないうちに、退学の手続きが終わり、私の人生で最後の学校生活が幕を閉じた。
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