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朝日を背に子供たちは汗を流している。彼らはライバルたちに先を越されまいと、陽が昇り始める頃には浜辺へ出て、バーゲンセールよろしく血眼になってお宝を探している。
それより岩石海岸を一つ挟んだ向こう、少年が一人、ひたすらゴミを袋に詰めている。そこはまだ地元の企業に穢されてはいないものの、海外から漂着するプラスチックごみで埋め尽くされている。
プラスチックは回収業者に持って行っても大した金にはならない。それゆえ皆敬遠しているのだが、彼だけは穴場とでも言うように、黙々とプラごみを拾っている。
少年の名はアディーノ。ラベルに見知らぬ文字が羅列されたペットボトルを袋いっぱいに詰め終えると、彼は一息ついた。今度は道路脇のリヤカーまで袋を運ばなければならない。
「おい」
彼は声をかけられ振り返ると、向こうで仕事しているはずの少年たちのボス、ガマが子分を引き連れて立っていた。
「こっちは今日は坊主だったぜ。お前の方はどうだ?」
海辺沿いに暮らしているせいか、彼らは釣り用語をよく使う。収穫がない日はこうしてアディーノを茶化しに来るのだ。ガマたちはアディーノがせっかく詰めた袋を破き始めた。
「ちぇっ、しけてやがんな。何にもねえでやんの」
彼らは荒らすだけ荒らすと、ゾロゾロと引き揚げていった。アディーノにとっては日常茶飯事なので、やれやれと首だけ振ると、散らかされたゴミを再び詰め直し始めた。
そんな彼の目の前に、ザッと誰かの足が止まった。またガマかと思って恐る恐る顔を上げると、アディーノの前には立派なスーツを着こなした紳士と、ガタイの良い大男が直立不動で立っていた。彼らがこの辺の人でないことは一目瞭然だった。
「やあ。熱心だね」
紳士の方が拙い言葉で挨拶をしてきた。アディーノは黙っている。
「君は、このビーチが好きかい?」
アディーノが相変わらず黙っていると、男は構わず先を続けた。
「そんな君にプレゼントだ。こいつを使って、この海を守ってほしい」
男は手のひらを上に向けてもう一人を紹介した。大男が機械音を鳴らしながらアディーノに会釈した。
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