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20才
大学二年生の夏休みに、念願だったヒッチハイクを実行することになった。明確に目的地は決めていないが、行けるところまで行けたらいいと思う。
お金は高校からバイトしてコツコツ貯めた。正直、これで足りるか不安だったし、そもそもこのご時世でヒッチハイクが成立するのか分からなかったが、子供の頃からの夢が叶うとあって、ワクワクする気持ちの方が強かった。
ヒッチハイクに出かける朝、俺は着替えや非常食などの必要な物を詰め込んだリュックを背負い、家を出た。
玄関まで見送りに来ていた両親を振り返る。
「じゃ、いってきます」
「いってらっしゃい」
母親は感極まった様子で、泣きながら手を振っていた。
国道沿いの道に立ち、親指を立てる。
中二の時に家を飛び出した時も、ここで車を止めようとしたな。あの時は一台も車は止まらなくて、ムシャクシャした。
俺は覚えていないが、八才の時にもヒッチハイクをしようとして、不審者に連れ去られそうになったらしい。母親が気づいてくれて本当に良かった。
やがて一台のトラックが止まり、人の良さそうなおっさんが顔を出した。
「兄ちゃん、ヒッチハイクかい? 俺も若い頃やったよー。乗りな!」
「ありがとうございます!」
俺はトラックの助手席に乗った。
人生で初めての、ヒッチハイクの旅が始まった。
(終わり)
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