契約は少し強引に

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 確かに彼には主に性格面でのよくない噂が多い。けれど、見た目の悪い噂は一度も――それこそ、笑ったところを見たことがないという不満くらいしか――聞いたことがない。  ほんの一瞬を切り取るためには瞬きすら惜しい。そんな心の声が聞こえてくるほどの真剣な表情。  きっと私たちが見ているものとは違う世界を見ているのだろう。モデルが見せるその瞬間を彼は片時も目をそらさず待っている。  あんなに熱っぽく、焦がれるような視線を向けられたら。  仕事振りを見ている最中、本人に知られればどんなオファーさえ断られそうなことを考えてしまう。  だって、あまりにも――綺麗だった。  本人はもちろん、仕事に対する真剣な姿勢が。 「ねー、志保ちゃん? なに見てんの?」
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