契約は少し強引に

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 突然後ろから声をかけられ、息が止まりそうになる。  いつの間にかいたアキくんに、慌てて先ほどの皆と同じく『黙っていろ』とジェスチャーをした。  はっとした様子でアキくんが自分の口を両手で塞ぐ。  カメラを向けられているわけでもないのに、よく咄嗟にそんなあざとい仕草ができるものだ――なんて他人事のように思ったときだった。 「――さっきから騒いでいるのはどこのどいつだ」  あんなに聞こえていたシャッターの音が、気が付けば止まっていた。  ゆっくりと神宮寺さんが振り返る。  それにあわせて――なんて薄情なことか、スタッフたちは『犯人はこいつです』と言わんばかりに私の前からすっと引く。  当然、神宮寺さんから私までまっすぐ道ができることになった。
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