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「……私に見せられる誠意がないと言った場合、どうなりますか」
わかっていて、そう聞く。
「それはまあ……もちろん、アキくんの起用は難しくなるだろうね。今回だけでなく、今後も」
(……もっと言えば、今後の業界で、ってことね)
そういうことがまかり通る業界だというのは知っていたつもりだった。
かつて声をかけられたあのときのおぞましさが、今また新しくよみがえる。
「私は――」
言いかけた言葉を飲み込む。
無遠慮で汚らわしい手が私の肩を掴んでいた。
「アキくんの将来は、相模さんにかかってるんだよ」
わかりました、なんて言えば今すぐこの場で押し倒されるのではないだろうか。
そう思ってしまうほど、高橋さん――もはやさん付けすることすら忌々しい――は鼻息を荒くしていた。
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