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低い囁きの方にこそ、疼きが走る。
「……余裕あるんだな」
ない。そんなものはどこにもない。
答えようと開いた唇はあっけなく塞がれた。
「こんなにしてるのに」
膝裏を持ち上げられて、もっともっと深くへ。
シーツにすがるだけでは足りず、その背中に爪を立てた。
声にならない声が漏れて、私と、彼の限界への引き金となる。
(あと、三ヶ月)
そう思っていないとやっていられない。
――長くて短い三ヶ月間の恋人契約。
どうして天才フォトグラファーの彼が私なんかとこんな契約を結んだのか。
さかのぼること、一週間前。
***
「志保(しほ)ちゃーん、おはよ」
やや冷たい印象を与える事務所の廊下で、賑やかな声が響く。
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