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人懐っこく駆け寄ってきたのは、私がマネージャーとして担当しているアイドルのアキくんだった。
歳は私の二つ下、二十六歳。売り出したばかりとはいえ、なにをしても憎めない明るいキャラクターが人気を博し、徐々に知名度を上げている事務所の希望である。
「アキくん、ちゃん付けはどうかと思うってこの間も言ったと思うんですけど」
「じゃあ、相模(さがみ)さん?」
「それでお願いします。……変な風に思われたら、困るのはアキくんなんですよ」
「志保ちゃんとなら変な風に思われても全然いいけどね」
「私が困るんです」
「えー」
ぶー、とわざとらしく唇をとがらせている姿はあまり二十六歳に見えない。
私は私で、そんなアキくんをときどき弟のように感じてしまうから困っている。
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