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物語ならばよく聞く話だった。でも、私の身近ではあってほしくないし、私自身も勘弁願いたい。
(だってこの仕事を続けたいし)
ただひたすらにそれだけ。
キラキラまっすぐな生まれたてのアイドルを、私の手で世界に羽ばたかせたいだけ――。
「俺、先に行ってるね。捕まえてごらんなさーい」
「走るとまた転びますよ」
「もー、乗ってくれてもいいじゃん!」
あはは、と明るい笑い声が遠ざかっていく。
笑えない冗談ばかりのアキくんだけど、こういうところが各所で好かれる要因なのだろうとわかっていた。
彼は本当に憎めない。わざとあそこまでの年下っぷりを演じているのだとしても、それがうまくはまっている。
――私、相模志保(さがみしほ)が新人アイドル『アキ』の担当になったのは、一年前。
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