9868人が本棚に入れています
本棚に追加
(……本当にここまで長かったな)
しみじみ思いながら、嘆息する。
(きっとアキくんはもっと上を行く。スキャンダルにさえ気を付けてくれればいいけど、意外にそういう話は聞かないし)
こつこつと軽快な足音が、自分の歩みに合わせて反響する。
そう、アキくんにはこういったアイドルにありがちな浮ついた話がない。
言い寄られたという話さえ聞かないのだから、よほどうまくやっているか、まったく話がないかのどちらかなのだろう。
そこまで考えて、以前その話をしたときのことを思い出してしまった。
――志保ちゃんは? そういう相手、いるの?
無邪気すぎて残酷な、アラサー女に聞いてはならない質問第一位。
今も耳に残るあの明るい声が、じくじくと私の胸をえぐる。
最初のコメントを投稿しよう!