5人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
夏休み。
その日は朝から部活があった。高校二年生の少女は夏の暑さにパジャマを汗で貼り付かせながら目が覚めて、絶叫した。
「遅刻ーーーーー!」
急いで彼女は階下へと降りると、母親に文句を言う。
「何で起こしてくれなかったの!」
「だって、夏休みでしょ?」
「部活があるんだってばーーー!」
のほほんとしている母親に対して絶叫を返した少女は、急いで身支度を調えるとバス停に向かって走る。
今日は晴天で、セミの鳴き声が響いている。しかし前日に降った雨があちらこちらに水たまりを作っていた。
水たまりに気を取られながら、ぴょこぴょこと跳ねるように走って行く。そのままバス停までの短い坂道を下っていく。足下に気を取られていた少女は気付かなかった。目の前に自分の学校とは違う制服姿の少年が立っていることに。
ドンっ!
「ったぁ……」
少女は坂道を下っていた勢いのまま目の前の少年の背中に激突してしまう。少年は一瞬だけのけぞると、すぐに振り返った。
「気をつけろよな」
低く澄んだ少年の声。
少女ははっとして顔をあげた。その刹那、少年と目が合った。
(綺麗な目……)
最初のコメントを投稿しよう!