プロローグ

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「女児の出生率を下げたのです。 戦が男尊女卑を助長するのは世の常ですが、それを引いても彼女達の境遇は目に余るものがありました」 私は頭を抱えた。 青い鳥は逃げてから気付くと言う。 しかし、幾ら何でも極端だろう。 神の常識は分からないが、女児の出生率が下がれば男児の出生率が上がる気がする。 「間違ってたら申し訳ないんですが、戦時中に男女のバランスが崩れたら大事になりません?」 戦争は最も効率的な大量消費だ。 人、物、金、時間、あらゆる物を食い潰し、破壊する。 これに宗教と女の奪い合いまで(から)んだら収拾がつかなくなるだろう。 「…………………………………」 「沈黙は肯定と見做(みな)しますよ?」 しおしおと頷く女神・イラ。 私はやっぱりと思いながら溜め息を吐いた。 会った時から思っていたが、この人、いや、この女神、かなりおっちょこちょいだ。 努力も遣やる気も空から回って逆効果になるタイプだ。 悪気はなかっただろうが、これで悪気があったら女神じゃなくて邪神である。 その世界に心から同情する。 「言い方悪いですけど、左遷で済んで御の字じゃないですか? 普通クビだと思います」 私がバッサリと言い捨てた時― ドオォォォォォォォォォォン!!!!!! 凄まじい轟音(ごうおん)が私の鼓膜をブン殴った。 「?!!!」 慌てて両耳を塞ぐ私とあっちゃ~~~と言わんばかりに目元を覆う女神・イラ。 嫌な予感がする。 「ちょっ、これなっ」 「申し訳ありません」 「はっ?」 謝られても困る。 嫌な予感が嫌な確信になるではないか。 「本当に申し訳ありません。 (つぐな)いと説明は後程(のちほど)必ず」 説明はともかく、償わなきゃいけない事が起きたんかいっ!と突っ込みたかったが、その前に白銀(はくぎん)閃光(せんこう)が私の視界を焼いた。 『っ?!』 思わず目を(かば)い、 『何っ?! 何なのっ?!! 頭がっ…………』 意識が遠のいている事に気付いた時は後の祭りだった。
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