プロローグ

6/8
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」 私は悲鳴を上げながら空を突っ切っている。 上を向けば青い空、右を向いても青い空、左を向いても青い空、下を向けば…………、広い森。 まるでスカイダイビング(パラシュートがないのであの世に着地するだろうが)だ。 「あんのクソ女神、覚えてろっ!! 次会ったらタダじゃ置かない! 髪(むし)って()べてやるぅぅぅぅぅ!!!!」 私が女神・イラ改めクソ女神を罵り倒した時- 【クソ女神はないでしょう】 頭の中でクソ女神の声がした。 「なっ、アンタどっから」 私は慌てて首をキョロキョロと動かし、近くに誰もいない事を確認する。 【時間がないので、重要な事だけ伝えます。 そこは地球の三つ下の世界、錬金術、煉丹術、魔術が発達した星です。 貨幣(かへい)価値は国によって若干違いますが、1クプラ百円、1ケセフ千円、1オール一万円が基本なので、これさえ覚えておけば問題ありません】 「どうでもいいっ! 果てしなくどうでもいいから、今すぐ助けてぇ!!!」 私は全力で暴れながら怒鳴った。 まだ話し続けるならブッ殺す!と密かに決意する。 【落ち着いて下さい。 私がいるのですから、余程の事がない限り死にません】 「余程の事?! パラシュートなしのスカイダイビングが余程の事じゃないと?!」 誰でもいい、罵詈雑言を吐き散らさなかった私を褒めてくれ。 【大丈夫ですから、落ち着いて下さい】 「落ち着けっかっ!! こちとら命かかってんのよ?!」 【私の力で体を覆っていますから、 何があっても無傷です】 「あのねぇ、私は一般人なのっ! 分かる? ふ・つ・う・の・に・ん・げ・ん・な・のっ! アンタらの万国ビックリショーに巻き込むんじゃっ、わっ、わわわわっ」 一般人の何たるかを懇切丁寧に説明してやろうと(りき)んだら体が右に傾き、その弾みで視線が下がる。 「ひっ、ちょっ、地面っ!!」 全身から冷や汗が吹き出した。 【あらあら、大丈夫ですか?】 『大丈夫じゃねぇよ!!! この駄女神っ!! クソ女神っ!! アホ女神っ!! 無責任女神ぃぃぃ!!』 罵声が喉まで出たが、それをグッと堪えて体勢を直す。 「はぁ~~~~」 二度と見たくない景色である。 私がスカイダイビングをする事は当分、いや、一生ないだろう。 だが、ホッとしたのも束の間、私の足元に大きな亀裂が走り、そこから白銀の光が漏れる。 「はっ?! 何っ?!」 【逃げなさいっ!】 「えっ?」 【早くっ!】 逃げろと言われても、この状況でどうしろと? 「でもっ」 【死んでもいいの?!】 クソ女神の(ただ)ならぬ様子が伝わり、私は焦ってパニックになった。 「へっ? 死ぬ?! ちょっ、待っ、冗談じゃっ」 両手足をバタつかせる私の視界を白銀の閃光が焼く。 「っ!!!」 「必ず助けますっ!」 私はクソ女神の上擦った声を聞きながら目をギュッと閉じた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!