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痛む頭を支え、私はノロノロと上半身を起こす。
「あーーーーー、いったぁ」
酷い頭痛だ。
生まれて初めての二日酔いか?
「えーーーと、何ちゃら女神にアイス食われて、説教してたらパーーと光って、パラシュートなしのスカイダイビングさせられて、聖母召喚がどうのこうの言ってて、目が覚めたら森?
訳分からん」
【大丈夫ですか?】
「っ?!
アンタッ、うぐっ!」
自分の声すら耳に障る。
まるで何年も音を聞いていなかったようだ。
【今は安静にして下さい。
召喚の影響で、体が悲鳴を上げているのです】
「しょう、かん?」
【魔術を介して、異なる世界の人や物を呼び出すのです。
対象を設定しなければ使えないので、他人を巻き込む事はなかったのですが………】
「私は記念すべき第一被害者って訳ですね」
全く、これっぽっちも、ミジンコ一匹分も嬉しくない。
こんな物より宝くじに当たりたい。
【本当に、申し訳ありません。
償いになるとは思いませんが、出来る限り望みを叶えましょう。
あなたが安らかに生きてゆけるよう、心を尽くします】
「じゃあ、白姫と黒姫に会わせて」
私にとって、あの子達はただのペットではない。
家族であり、今となっては故郷を思い出す縁だ。
あの国で、あの町で、私は生まれた。
あの家で暮らし、あの親に育てられ、あの景色を愛した。
私の総てであり、私を創った物だ。
忘れたくないし、忘れられたくない。
私があの世界、あの国で生まれ、あの町で育った事を―
【分かりました。
あなたが、そう望むなら………】
『?????』
苦痛に耐えるように、何かを想うように、駄女神は言った。
白姫と黒姫に会える、また一緒に暮らせる、この時の私はそれしか考えていなかった。
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