出てきたこけし

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出てきたこけし

 おばあちゃんが亡くなった。闘病中だったおばあちゃんが亡くなった。87歳だった。  昔、私はおばあちゃんの家で生活していた。そこでたくさんの時間をおばあちゃんと過ごした。  おじいちゃんは早くに亡くなっていたから、写真でしか顔を知らない。早くにおじいちゃんを亡くしたおばあちゃんは、それから女手一つで子どもたちを…父たちを育てたらしい。  おばあちゃんの遺品整理をしていたら、押し入れの奥にある衣装ケースのような物入れの中から、とても見覚えのある、大きなこけしを見つけた。 「あ!これ覚えてる!おばあちゃんが私にくれたんだっけ!」  おばあちゃんは、知り合いのこけし作家さんに作ってもらったそのこけしを、当時小学生だった私にくれたんだっけ……  だけど私はこけしをなくしてしまい、探しても見つからず、結局そのまま私たちは引っ越した。  そしてこけしは再び、時を経て私の手元に戻った。
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