滑稽なこけし

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滑稽なこけし

 こけしは小さな目と唇で、あまりに滑稽な顔でこちらを見ていた。 「ほら、聖良(せいら)に似てるだろ?」  おばあちゃんはそんなことを言ったが、私は微妙な気持ちになり、 「えーー……?」  と返したっけ。  私はそれからしばらく、こけしと行動を共にしていた。おままごとでもこけしを使い、食事の時もテーブルの上に置いた。  大きくて太いこけし。  おかっぱ頭で赤い着物を着ているこけし。  着物のデザインなのか、赤いお花がぽん、ぽん、ぽん、と5つ、描かれていた。  そして、こけしの下の方ー…5つめのお花の絵の下に、お星様のシールが貼られていた。    このシールは最初からついていた。おばあちゃんに、 「このこけしが聖良のものだと、すぐ分かるように」  と、最初につけてもらったんだっけ。  そういえばー…  こけしの下の方ー…ちょうど星のシールの下あたりに、円柱状態の胴体部分を囲うように、薄い線が彫られていた。  …もしかしたらひねると、蓋のようにパカっと外れるのかな?と思いきや、それはぴくりとも動かなかった。 ca225590-6aab-458d-8a58-3dca020268c5
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