第0章 別れは突然に

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特に父さんの話を聞くのが一番好きだった。 戦闘では魔族が逃げ出すほど強い精霊剣士(精霊魔法を使用する剣士)で、剣技は舞のように鮮やかで、精霊に認められ強大な力を振るう姿は精霊王のようで、敵同士だったがその人柄で亜人と友情を結んだことや、最後に激闘の末に魔王を倒して世界に平和をもたらしたことなど、強くて誇らしい自慢の父さんの話は何度もせがんで話してもらった。 まさしく勇者だったと誰もが言っていた。 繰り返し聞いても飽きなかった。 話相手の目には父さんが大好きな息子と映ったに違いない。 「話はそれだけじゃないんだぜ?」 友人はにやりと笑い話し出す。 強い父さんに求婚者が殺到してあわてて逃げ出す話や、大きな遺跡で珍しい色の精霊秘石を見つけ、それを母さんにプロポーズして渡した話、母さんを怒らせて父さんが必死に謝罪する話も聞かせてくれた。 父さんが顔を真っ赤にして慌てて仲間の口を塞ごうとしている。 そんな父さんの様子を見てみんなが大笑いをしている。 普段は穏やかで厳しい父さんの別の顔を見られて嬉しくなり、俺もつられて大笑いをする。 「レグ、お前まで笑うことはないだろ~。」 バツの悪そうな顔で父さんは嘆いていた。 優しくも厳しい父さんだ。 次の日の稽古は一段と厳しかったのは言うまでもない。
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