放課後、僕は彼女に殺される。

放課後、僕は彼女に殺される。（１）

「昨日は、よく眠れた？　まあ、その顔を見れば答えはすぐ分かるけれど」

　岳の目元には大きなクマができており、真琴はそこから、質問の答えを見出した。笑みを浮かべ、顔色の優れない彼をじっと見て、言葉を続ける。

「いっぱい考えてくれたみたいで、私も嬉しい。でも、結論は分かり切ってるのに、何を考える必要があったの？」

　一晩中考えていた事を無駄だと嘲笑うかのような質問に、彼は少し考えた後、口を開いた。

「苦痛に見合った幸福なのか、どうか、とか……？　他に、いい方法はないのか、とか……そんなこと考えてたら朝になってた」
「それで、いい方法は見つかった？」

　彼女の問いに、彼は残念そうにかぶりを振る。

「そっか。昨日はあんな大胆に、迫ってきたのに。昨日の勢いのある椿本くんは、どこにいっちゃったんだろうね？」

　昨日とは全く異なる岳の態度を、クスクスと笑いながら煽ってみせる真琴。
　悔しさはあったが、そんな彼女の表情が可愛すぎて、彼は耐え切れずに目を逸らした。
　すると彼女は、彼の視界に無理やりにでも入ろうと、距離を詰め始める。