放課後、僕は彼女に殺される。(1)

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「ねえねえ。こんなことで照れてるようじゃ、私と手も繋げないよ? これから手を繋ぐ以上のことを、私とできるかもしれないのに――――ねえ?」 「まだ、昨日のこと受け入れるって、言ったわけじゃない……」  彼女の手が、そっと彼の頬に触れた。  額から垂れた汗を、彼女の指はそっとすくいとる。  彼女はそれを舐めたそうに、上唇を舌でなぞった。 「だったら教えて? 昨日一晩中考えて出した答えは?」  岳は、昨日真琴が提示してきた『契約』について、昨日から考えていた。  今朝になっても答えは出せず、こうして彼女を前にするまで、考えがまとめられずにいた。  そして、彼女と一緒の空気を吸っているこの時間を経て、固まった。  ――やっぱりこの気持ちは、昨日から一ミリも変わらなかった。 「笠嶋さん」 「はい」 「改めて、言うよ……――――僕と、付き合ってください!」  岳の出した答えに、真琴は笑った。  嬉しさが溢れ出た笑顔ではあったが、それは彼のことが好きだからではない。  彼女にとってはあくまでも、彼との『契約』に過ぎなかった。 「ありがとう、椿本くん。私を、受け入れてくれて。私を、“死ぬほど”愛してくれて」
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