放課後、僕は彼女に殺される。(1)

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放課後、僕は彼女に殺される。(1)

 笠嶋(かさじま) 真琴(まこと)は、教室で一人、『夢』を見ていた。  外は真夏の様相。エアコンの風の冷たさが心地よく、彼女は眠りについてしまった。  その過剰なまでの冷たさを段々と不快に感じてきて、彼女の中の嫌な記憶が、呼び起こされてしまった。   過去に起きた出来事が、今では『悪夢』となって彼女の中に棲みついている。  中学三年生の夏に起きた忌まわしき事件。  その日を境に、真琴の全てが変わってしまった。  そして、何度も見るようになったその『悪夢』は、ある結末を迎えるまで、決して覚める事はない――――はずだった。  夢の中の視界が真っ赤に染まり、『悪夢』は結末へと向かうはずだったのに、誰かによって続きを遮られてしまった。  現実世界へと引き戻された彼女は、眠りの邪魔をしたのが誰かを確認する。  どうやら、同じクラスの男子が、寝ていた彼女に触れたせいで、夢の途中で目が覚めてしまったようだ。  ――彼の名前は確か――――。
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