10. ツノジカ団(2)

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10. ツノジカ団(2)

 ヒジカタというのが、あの黒いふたり組のうちのやせぎすな男のほうだというのはわかる。  だがしかし 「心がとらわれたって……どういうことです?はやくおとうさんとおかあさんを助け出さないと……そうだ、警察に電話してどうにか!」 「――そんなことをしても、なんのたすけにもならないよ」  あすかは興奮しているヒロユキに、ひややかに言った。  ヨウイチロウも 「たしかにむすめの言う通り、ヒジカタの術に対して警察はなんの力にもならないだろうな。術にとらわれた状態にある今のきみの両親では、警察が来ても『なんの問題もない』とヒジカタに言わされて、警察を追い返すだけだろう。逆に親の権利をタテに、きみを強引に連れて行こうとするだけだ」 「そんな……じゃあ、いったいどうすれば……」  とほうにくれる小学四年生に、河野製造の社長は 「残念ながら、わたしたちにもあのヒジカタの術は解除できない。なにものかの支援を受けているようでね。  となると、わたしたちにできることは、なによりもまず『ツノジカさま』を取りかえすことだ。それによってヒジカタ、そしてそのうしろにいるものの企みもくじかれるにちがいない」 「ツノジカさま……」  たしか、そんな言いかたをあのヒジカタって人が…… 「わたしたちはてっきり、あの『うらぎり者』のヒジカタが今回のツノジカさま失踪の首謀者かと思っていたんだが……きみを助けたあすかによると、どうやらヒジカタもまたツノジカさまの行方を追いかけているようだな」 (河野さんがぼくを助けたって?そんな、こどもがあぶないことを?まさか、あの光も……?)  さも、そんなことどうってこともないように立っているあすかと、同じくあごをかきながら考えるヨウイチロウ、そしてその後ろにしずかにひかえている人たちの異様な様子に、ヒロユキはすっかり置いてけぼりを食っている気がして、おもわずさけんだ。 「いったい、あなたたちはなんなんですか!?  なんでぼくが急におそわれたり、こんなふうに無理やり連れてこられたりしなきゃいけないの!?おとうさんたちは!?」  ヨウイチロウは、そんなヒロユキの顔をちょっとびっくりしたように見たが 「――ふむ、そういえばそうだった。きみはなにも事情がわからないんだったね。  これは、ほんらい秘密にしておくべきことなんだが……きみには知る権利がある」  とつぶやくと、あすか、そして後ろにいる大人たちを「いいな?」というふうに見わたしたあと、ヒロユキにきちんと向かいなおし、高らかに言った。 「わたしたちはツノジカ団!あのカムノオオツノジカ像さまにおつかえし、守るためにかむのに存在する秘密の団体だ。河野家はその中心で、不肖(ふしょう)このわたしが団長をつとめている」 1e1b5d22-6c44-43ea-a06b-dd8eb90c7825
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