03 淫魔の住む魔界

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〜 神崎 視点 〜 悪魔は容姿のいい妻を気に入り、ある晩に 俺の前で、腰を揺らしながらその身を貪る様に喰らっていた 悪魔は喰い終わるまで死んだ事に気付かないほど夢中になって、交尾をしていた   まるで、カマキリのメスが交尾をしながらオスを喰らうような… その真逆の関係が、目の前で行われた事に吐き気と恐怖と殺意を覚えた 無残に喰い殺された妻の亡骸を、まだ幼い翔太には見せれなかった 葬儀の日は、顔を隠したまま行い  ハッキリと見せないまま棺桶に入れ、火葬した 悪魔について何も知らない幼い翔太を大切に育ててきた 父親の俺には、母親のような愛情も、接することも出来ないが…… それでも、男で一つで育てた息子は命よりも大事だと思った  また俺の前に、悪魔が現れた 人を喰らう事はない淫魔だが、人を魅了した後に魂を喰らうのは変わらない 外道な悪魔が…… 妻と同じ事を俺の身に起こるのだとどこか思っていたが…… 淫魔は…翔太までも気に入った 俺だけなら良かった…、俺だけに興味を示すなら、安心すらどこかあったのに 夕方の表情や会話を見て不安になった また大切な家族を喰われるんじゃないかっていう恐怖が襲った 案の定、人を喰らわないと思った淫魔は俺の眼球を抉り、見せ付けるように口の中に入れ、転がしてからじっくりと味わい、噛み砕いてから飲み込んだ   目を焼かれたような痛みに、生理的に涙が溢れるも淫魔は目元に口付けを落とした  喰われる…と言う恐怖で身を硬直していれば、当たるのは触れる程度の柔らかさ 直ぐに痛みを引いたのだと思うが、口元に血のついた淫魔は、赤い瞳で見詰めてきた 「( あぁ、俺はコイツに喰われる…… )」 勝手に現れ契約し、仕事場でやったようにさっさと殺せばいいのにそんな事をしない じっくりと痛め付けて、ボロ雑巾のように使い尽くしてから、捨てるのだろう 飽きれば喰らうか、興奮の余り殺すだろうな コイツ等に理性は存在しない   あるのば 本能 ゙だけだ 「 っ…… 」 初めから触れられる度に吐き気を感じていた  けれど、逃げる事も嫌がる事も言動に反する為に我慢をした だが、今は……全身の身の毛がよだつ  人の眼球を喰らったのを見たせいか、触れる手も舐める舌先も喰われるんじゃないかって思ってしまう 翔太はまだ10歳だ 俺がいなくなって、まともな身内がいないの彼奴の行き先は孤児院だけだろう そんなのは避けたいのに… 俺はこの先……生きてるのか心配になった 父親である存在が、悪魔に憑かれ徐々に身を喰らわれる 最後には魂までも喰って、コイツは満足して魔界に帰るのだろう 残った、翔太の気持ちなど理解する事も、出来もしない薄情な悪魔に…… 俺は何故、優しさを向けなければいけないのか  飯も、風呂も、居場所さえ提供する 自分を殺していく相手にだ こんな事なら、身体は好きにしろとは言うんじゃなかった 「 っ……クッ、ンッ……! 」 「 はぁー……んっ、はっ…… 」 長い爪が肌をなぞり、舌先は頬や耳へと触れ 味わうように時折甘く噛み付かれる 開かれた脚の間に身体を割り入れ、律儀に孔を拡張するように動く指は数えたくない程に入ってるだろう 薄っすらと目蓋を開き、半分しか見えない視界を見上げれば、熱を含み口角を上げ行為の準備をする淫魔がいる 「 はっ……挿れるね…… 」 「 っ……!! 」 ズルリと指を引き抜かれ、変わりに押し込められた質量の大きな異物は身を引き裂くように奥へと進む この先、何度も何度も行為を求められるのだろう コイツが欲しいのは肉体と、ハメた時に相性のいい内部だけ  他に求めてないのなら、酷く荒く抱いてくれりゃ清々しく嫌いになれるのに…… 「 ぁ、あっ……!くっ……っ!! 」 「 ハッ、ンッ…… 」 一度、媚薬を使うなと言ってから使う事も無いまま、触れる手も揺らす腰も、何一つ無理矢理にはしない だから、嫌なはずなのに…気持ち悪いと思うのに、身体は淫魔を求めてしまう この優しさに、息が止まりそうだ 「 ぁあっ!いっ、ッ……!! 」 「 ッ……いいよ、俺も中に出すから…… 」 「 っ〜〜!! 」 近い将来、俺はこの淫魔に全てを喰われそうだ 「 はぁ、はぁ…… 」 放った精子が自らの腹を汚し、奥へと注がれる熱に肉壁は吸い付くように強弱を付け締め付ける 荒くなった呼吸を整えていれば、淫魔は腹に触れ精子を指で掬い舐め取る 一つ一つの動作に色気があり、嫌でも見惚れていれば抜くことの無いまま淫魔は身体に腕を回し腰を揺らし始めた 「 あぁ、くそ……!んな、擦るなっ……ぁ、あっ! 」 「 ふっ、好きなくせに……精子、擦り込まれるの…… 」 「 っ〜〜!! 」 次第に俺の好きな部分を一つ一つ知っていく グズグズに溶けた中を擦られて、頭は真っ白になる 悪魔に抱かれてるなんて嫌なのに、身体は素直に反応する 狡いと、酷いと、子供の様に泣き付きたい程に気持ちがいいんだ 「 あぁ、あっ、もぅ、もっ、ぐっ…アッ、あっ! 」 「 はっ…気持ち、いいね……オニーサン…… 」 優しく抱かないでくれ、触れないでくれ 頬に触れる手や、口付けが酷く胸を締め付ける 行為をするだけして、羊の姿で眠る淫魔をよそにベッドから起き上がり、シャワーを浴びに行くのは慣れを感じ始めた 「 ………態々、義眼を入れたのか 」 神経が切れた感覚があった為に、もう右目は全く無いと思っていたのだが… まるで彼奴と同じ様なエメラルドグリーンの眼球が埋め込まれていた 宝石のように光る緑色の瞳は人間味が無い色をしている   「 チッ……… 」 頭に過るのは喰らう時ではなく、何故か行為をしてる最中に時々重なる瞳だ 嗚呼、胸糞悪い 鏡から離れ、風呂に入りシャワーを浴び全身を隅々まで洗っていく 「 ……精子、底無しかよ…… 」  後処理をするべく、立ったままの孔に指を入れ掻き出せばいつも変わらない程、ドロっとしたものは溢れ出る 奥まで注がれた為に、全て抜き出すことは出来ないが、ある程度流し、石鹸で綺麗に身体を洗う  「 っ!! 」 精子を擦り付けてくるような感覚が頭と身体に過り、奥へと感じた違和感にその場で膝を付き腹下に触れる 気持ち悪さと、感じたことの無い奥の…更に奥が熱い 「 くそ……ぜってぇ、殺してやる…… 」 悪魔に喰われるぐらいなら、翔太の未来を守るべく 俺は、殺す方法を考えてやる 部屋に戻れば、片隅で丸くなって眠る大きな黒い羊は起きる様子がない 眠っていれば翔太の言うように、只の羊の悪魔に見えるが、起きれば質の悪い淫魔だ 「 図々しい奴…… 」 ダブルサイズのベッドが小さいと文句を言ってたが、体位が変えづらい程度で本人はベッドで寝ることは無い いや、もし…一緒に寝てたなら蹴り飛ばす自信はある 今も、部屋の端だろうと居ることさえ気に入らねぇのに…… 「 ……寝るか 」 生気を奪われてる為に、気怠くて仕方無い 風呂に入る事すら怠いが、やり終えて即寝たくはない 何とか終えるまで我慢した事で、ベッドに倒れ込み、そのまま仰向けへとなれば目を閉じ眠りに付く 何となく腹下を撫でていたが… よっぽど、突かれた事に違和感を覚えてるのだろうな 忘れ去りたいが、忘れる前に何度も抱かれるのが落ちだ 淫魔が、側にいるのに夢を見ることも無くぐっすりと眠っていればふっと呼吸がし辛い事に気付く 「 っ……!?ンッ!! 」 一気に意識が覚醒し、目を見開けば寝起き早々に淫魔の顔が近く唇が触れてるのに目を見開く 「 んんッ!!? 」 液体でも、固定物でも無いものが流し込まれてる感覚がして無意識に喉を鳴らせば身体は焼けるように熱くなる 「 っ!! 」 離せと肩を掴み、爪を立てようにも止めることをせず 血が全身を巡り、腹下は酷く熱い 「 終わり…… 」 「 はぁ、ぁ、はっ……何をしたんだ…… 」 やっと口を離せば満足気に軽く笑い、頬に口付けを落としてから身を起こした淫魔は指先で腹下をなぞる 「 オニーサンが気にする必要は無いよ。さてと、腹拵えしたいな……お腹空いた 」 「 は……? 」 まるで鳥の親が子に餌を与える為に、吐き戻しをしたような感じだった 何かを食わせたのか? 「 うっ…… 」 考えるだけで気持ち悪くなり、口を押さえて俯けば悪魔はくつくつと喉を鳴らす  その態度に、考えていた事は合ったのか 「 俺が今まで溜め込んでた生気と魂を食わせて上げたよ。可哀相だね、オニーサン……徐々に悪魔に侵食されて 」 「 ッ…… 」 俺の結界なんて、デコピンをする程度で壊される まともに神父の仕事をして無かったせいなのか、それとも神を本気で信じてない行いのせいかは分からないが…… コイツには、聖書に書かれてるもの全てが通じない 吐き気を押さえ、何とか耐えてから腹下に触れ睨む 「 嗚呼…気に入らねぇ…… 」 「 なにを? 」 「 自分さえ良ければそれでいいのか。悪魔ってそういうものか 」 「 そうだよ。悪魔は自分の欲求に素直だからね。人間のように汚れてない……純粋無垢な思いを持ってる。否定しないよ、オニーサン 」 ハッキリと告げ、くつくつと笑っては魔法陣を現し直ぐに姿を消した淫魔に溜息を吐く  「 はぁ……朝御飯、作るか 」 考えても仕方無い 悪魔に意味を考えて、持たせても無意味なんだ 彼奴等の事はあの日からよく知ってるはずだ 喰いながら行為をするような奴等だ 「 おはよう、父さん。あれ……顔色悪い? 」 「 ん?あぁ、はよう。いや……そんな事ないが 」 白身魚を焼き、味噌汁やご飯の準備をしていれば、キッチンへとやって来た翔太は顔を覗かせ見上げてきた 「 そう?…それに、父さん…その目どうしたの?カラコン? 」 「 嗚呼……。少しな 」 息子が右側にいると見辛いと思う日が来るとは…… 少しだけ顔を傾けて見れば、翔太は普段と変わらず笑顔を向けた 「 そっか、似合うよ!クオレみたい 」 「 ……そうか、彼奴と一緒なのは嬉しくないな 」 「 素直じゃないね。そう言えばクオレは……?見ないね 」 「 知るか、気が向いたら帰って来るだろう 」 「 そう、だよね。家は此処だし 」 苗字や住所を勝手に決め、そして勝手に立ち去る 朝飯用に買った魚が一匹余る事すら分からないだろうな もう、飯なんて作らないほうが良いんじゃないかって思える 「( 仕事行く前に薬局でカラコン買うか…… )」 義眼にカラコンを使う日が来るとは思わなかったが、翔太が気にするって事は仕事の連中はもっと気になるだろう 仕事上、外見に気を使う人間の身も考えてくれ 「 はぁ……。彼奴が来てから色々疲れる…… 」 仕事疲れより、アイツに関わってるほうが精神的にも肉体的にも疲労するなんてな 翔太を学校に送ってから、仕事に向かった時にはすでに金曜日の疲れのように、身体が重かったが ある程度してからそれは気にならなくなった それと同時に、腹下の違和感もだ 朝のあの時間だけ、疲れていたぐらいで10時を過ぎた頃からはごく普通に仕事が出来た 淫魔は、その夜も姿を見せなかった
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