01 淫魔降臨

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〜 クオレ 視点 〜 何十年前、何百年か前なのか忘れたけど 結構前に魔界に戻ってきてから交尾をしまくって、なんかフッとした時には精子を吐き出せなくなっていた 別に繁殖行為を進んでやってたわけじゃ無いから別にいいんだけど、達せなかった時のモヤっとした感覚はずっとあった それが気に入らないから色々悩んでたけど、やっぱり人間とヤるのが一番いいんじゃ無いかって結論が出た 「 ママ!大きなぬいぐるみー! 」 「 ほんとね、こんなところにぬいぐるみなんてあったかしら 」 さて、上級悪魔の淫魔降臨 俺に惚れて、近付けばいい、その中から良さそうなやつを探してやればイイだけだ フカフカの毛に触れて、抱き着いたり撫で回す人間の女、子供 流石についさっき、ハーピー族と交尾して燃えなかったから女は避けたいし、体格差の激しい小さい餓鬼に興味はねぇ 有るのは締め付けがよく、抱き心地のいい奴がいいんだが…… 「 ママ…なんだか、眠くなってきた…… 」 「 そうね、このぬいぐるみ……気持ちよくて、眠く…… 」 羊は寝るときに最適だと遥か昔から言われてきたのも知らないのか 地面に倒れて眠りにつく女、子供へと視線を落とせば何故か、人が集まってきた 「 なんだ、このデカいぬいぐるみ。凄くフワフワするな! 」 「 顔がマジで可愛い!!やばっ、チョーフカフカ!! 」 パシャパシャと変な音は聞こえてくるし、不快な物を向けられるのは気に入らない 身体に触れる者が倒れて行くのを横目に、ゆっくりと足を動かし歩き出す 既に、その場に起きてるものなんて存在しない 「( さて……、性欲があって生命力もあるような奴を探すか…… )…メェェエ 」 蹄を動かし、記憶にある時より随分と歩きやすくなった地面を歩きながら 人の姿へと変え、魔界と変わらない服を身につければ、目についたガラスを見て立ち止まる 「 流石…俺、カッコイイ〜 」 悪くないと笑みを浮かべては厚いブーツを鳴らし、コンクリートの街並みを歩く 「 そこのお兄さん、イケメンだね!遊ばない? 」 「 ねぇ、ウチ楽と遊ぼうよ 」 行為をするのにベストな場所はいつの時代も変わることがない 欲に満ちた匂いがする場所に行き、ゆっくりと歩いていれば獲物は引っ掛かる 俺の腕へと抱き着き、貧乏な胸を押し付ける染めた金髪の女へと視線を落とす 「 股が緩そうなメスだな 」 「 えっ……今…なんて? 」 「 その魂も薄味だろうが、腹拵えには悪くない……。このクオレ様の朝食になることを喜べ 」 「 なっ、くっ……!!っ……! 」 腰に腕を巻き引き寄せて、唇へと噛み付くように口付けを落とし、吸い込む様に食らえば引き抜いた魂を喰らい、力無く倒れた女を他所に口元を舐め、もう一人の女へと視線をやる 「 まずっ……まぁ、悪くねぇから……。御前の魂……俺にくれ 」 「 ひっ!!! 」 怯えなくとも痛みを与える訳じゃ無いだろう 悪魔に魂を抜き取られた奴は天国には行けず、魔界に落ちるか、この国にある地獄って場所に行くだろうが俺には関係無い 腹が膨れたらそれだけで良いために、近寄ってくる女を喰らいながら、良さげな人を探していた 「 クソまずい飯ばかり喰うぐらいなら…帰ったほうがマシじゃねぇか。人はこんなのも不味かったか? 」 汚れきった魂は味のない、土を喰ってるように不味くて仕方無い 腹が膨れるからって喰っていたが、やっぱり交尾をして惚れさせからの方がいいか? だが、面倒くせぇからな…… 手っ取り早く極上のステーキ肉みたいな魂を食いたいと思い、行く先々の街で喰っては、匂いを頼りに探す 「 ………歩くの疲れた、もう無理 」 一週間で結構、歩いたんじゃねぇかってぐらいに歩き疲れて、脚はパンパン 今の此処じゃ、牡羊なんて目立つからしなかったのにこの人型の身体を休めたくて、茂みに隠れ座り込む 「 此処だとうるせぇ、餓鬼は来ないだろ……少し寝て……また飯を探そう…… 」 ふわりと一つ欠伸を漏らし、両手を身体のうちに曲げて入れ、毛をふっくらと膨らませて眠りについた 俺自身の夢は、大したものを見ないから只身を休める事しか役目が無かった 「 これ、ぬいぐるみ?父さん…!見てみて、大きなぬいぐるみがある 」 「 不法投棄か?下手に触るなよ? 」 「 いいから見て、なんか、動いてるようにも見える……息してる? 」 「 は………? 」 すんっと鼻に香った焼く前の肉みたいな匂いがする  例えるなら未熟な果実のように、これから手を施して熟してやるような甘い匂いに毛に埋めていた顔を動かした 「 ぎゃっ、動いた!? 」 「 でけぇ、羊……じゃねぇな……。翔太(しょうた)、今すぐ帰るぞ 」 「 えっ、なんで?モフモフしたい…… 」 「 いいから、嫌な予感がする。完全に起きる前に帰るぞ!! 」 青臭い子供の手を引き、未熟な果実は遠く逃げて行く 「 メェェエ( 逃さねぇよ…… )」 やっと見付けた甘い果実、手を程して食いたいほどに汚れてない魂の持ち主 こんな直ぐに見つかるとは思わなかったからこそ…逃がす気は無かった 目を覚まし、身体を起こし駆け足って行く 「 父さん!!でけぇ羊が追いかけてくる!! 」 「( 翔太が狙いか…?魔力を感じ無いから油断して近づき過ぎたな )…飛ばすぞ 」 鉄の塊に乗って走り出したその背を追いかけ、他の奴等の視線が気になった為に地面へと身を埋め、姿を消す 「 なっ!羊が消えた!? 」 「 いや、追い掛けてるはすだ。あいつ等はハイエナの様にねちっこいからな…… 」 追い付けない速さの為に追い掛けて行けば、車は速度を上げコンクリートで作られた道を突っ切った 逃げなくとも… 逃げれないのだから諦めれば良いものの… 〜 神崎 視点 〜 神父だった父の影響もあり、小さい頃から妖怪やら幽霊といった分類は感じることが出来、魔力の強いものなら見えるときもあった   持病で父が亡くなり、教会を引き継いでから前よりずっと感知と見る力は備わったとしても、あんな魔力が無いまま、羊とは思えないデカさの魔物がいる事に驚いた 俺のように少し感じ取れる息子の翔太ですら、気付かないまま触ろうとしたんだ もし、触っていたら…と考えると恐ろしい 「 翔太、俺は結界を張り直す。御前はいつもの場所で隠れててくれ 」 「 祭壇の中だよな!わかってる! 」 姿は見えないといえど、狙った獲物を逃すなんて事はないだろう 合ったとしても掴まえるチャンスを狙ってるはずだ 教会の敷地内に車を止め、いつも持ち運んでいたロザリオと聖書を持ち、翔太の肩に触れ祭壇に行くように指示をしては、 本を開き、首にロザリオを垂らし、聖水を地面に垂らし魔除けの言葉を唱える 「( これで、教会の中には入れない…… )」 俺の知る限り、入ってきた魔物や妖怪は存在しない この辺りは済んだ空気が流れ、魂が溜まるような場所でも無い 父がどれだけ考えて建てた場所か改めて思う 「 手汗が……。チッ……それだけあの魔物は、魔力があると言うことか 」 無意識に濡れた手の平に、此処まで緊張してるのは初めてだ 結界を張り、辺りに気を向け魔力を感じない事に多少安堵しては、祭壇の方へと歩いて行く スーツを着たままゆっくりと歩き、一つ息を吐く 「 もう……っ!! 」 大丈夫…そう、言おうとした瞬間にガラスの割れたような音が頭の中へと鳴り響いた ″ なんとなく……ここはイヤな感じがする……でも、大したこと無かったなぁ……。ねぇ、オニーサン……もう、鬼ごっこは終わりか? ″ 「 っ!! 」 祭壇の前にある赤いカーペットの上に、魔法陣が現れた共に、姿を見せた大きな巻角をした赤い目の真っ黒な羊は、気配も魔力も無く、目の前へと立ちはだかった 低く獣のような声が脳に直接響き、ロザリオを強く握る 手持ちに聖水も銀の弾丸もない、結界を物ともせずに壊したやつに果たして…… は?この羊……首にネックレスぶら下げてないか? モコモコの毛で見えづらいが…確かにシルバーに光るネックレスを着けていた  まさか、そんな……父の残したものは通用しないのか? 「 メェェエ( オニーサン、俺と交尾しよ )」 デカイ羊は、目の前で立ち止まれば髪へと鼻先を当てた そして、動物園の触れ合いコーナーで聞くような鳴き声を発した あの頭に響く声ではなく、高くも低くもない、羊の声だ…いや、寧ろ山羊(ヤギ)か? 「 メェェエ( はぁ、オニーサンいい匂いがするなぁ )」 スリスリと頭に擦り寄られ、髪に摩擦を感じながら、恐る恐るロザリオを羊の額へと押し当てた 「 メェ? ( 撫でるなら手がいいな )」 案の定、ロザリオなんて効果は無かった 手の方へと自ら鼻先と額を擦り寄せる羊に、俺は諦めてその額を軽く爪を立てて掻けば、羊は後ろ足をピクピク動かし、小さい耳を下げて喜ぶように目を閉じた   なんだこいつ……ほんとに魔物か? だが、こんな黒くてデカい羊がいるとは思えないし、魔法陣から出て来たのも見た なら、本当に魔物か?と考えていれば 羊のルビーのような赤い目は、エメラルドグリーンの緑色へと変わり 前脚を動かせば、唖然となった 黒い煙に身を包んだ羊の姿は消え、その代わり高身長の若い男は姿を見せた 硬直した俺に、男は手を取り片膝をつき手の甲へと口付けを落とす 「 オニーサン、俺と交尾をしよう 」 「( 魔物じゃない!!悪魔じゃねぇか!!それも、上級淫魔だろ!! )」 標的が息子じゃなくて良かったと喜ぶべきなのか、いや、何一つ喜べない 35歳でバツが付いて、子持ちの神父が淫魔に交尾を求められてるなんてあり得ないだろ! 「 ば、馬鹿言え!!俺は男だし、子持ちだぞ!絶対に却下だ 」 やっと動けた時には手を振り払い、後ろへと1歩下って逃げのうとすれば、視線を外したときには悪魔の姿はなかった そして、気配もなく背後に立っていた 「 っ!! 」 「 オニーサンに拒否権は無い。俺が抱きたいから抱くだけ、すげぇ…気持よくしてやるから交尾しようぜ 」 「 既に御前が気持ち悪くて虫唾が走る 」 「 ふふっ、照れてるんだなぁ? 」 「( コイツは……きっと、馬鹿だ。いや…絶対に馬鹿だろ )」 此処が教会だと言うことも、俺が神父だと言うことにも気付いてないよな馬鹿だと思った そんな奴に憑かれた?有りないと言うか認めたくは無い 身体に腕を回し、髪へと口付けを落としては片手で手を握るよな奴に、俺の身体を渡すはずがない 「 いっ!!?なっ、オニーサン、なにすんだ!! 」 「 物理は効果あったか。いいか、俺は御前と性行為をする気はない。諦めて魔界に帰れ、悪魔 」 脚を踏めば効果あったようで、しゃがみこんで痛がる様子を見下げてハッキリと告げれば、涙目になっている悪魔の瞳は赤く色が変化した その色に一瞬、寒気が走る 「 へぇ、面白いなぁ……。 この上級淫魔のクオレ=ディアブロ・アリエーテに抱かれたくない奴はいないんだ。 牡羊の悪魔・クオレ様に惚れたと言わせてやるよ 」 「 っ!!! 」 俺は嫌な悪魔に憑かれた 上級淫魔と名乗るからには、嘘を付いてる様には見えなかった 足元に現れた魔法陣と共に紫色の光に驚けば、悪魔の姿は無く、その変わりに手首に鋭い痛みが走った 「 なっ!? 」 いつの間にか手首は薄く切られ、それでも血が流れるほど滴り落ちれば、何処からか悪魔の声が聞こえた ″ クオレ様の贄として契約は終わった。死ぬまで、その証は消えないぞ。御前は、悪魔と契約したんだ ″  「 一方的のくせに…… 」 胸元に感じる焼けたような痛みに、見たくもない印が刻まれたのだと気付いた 血は止まり、魔法陣が消えればあの悪魔の姿も無くなっていた 一方的に好かれ、そして契約をされる 本当に、悪魔とは胸糞悪いやつだな 「 父さん……もう、大丈夫? 」 「 あ、あぁ……多分な 」 もし、息子の命を狙うなら どんな方法だろうと殺してやる
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