02 お騒がせ淫魔

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〜 クオレ 視点 〜 気になるほどに匂いを感じれば、風呂に入る事は魔界でもあった 大半の精子や愛蜜の匂いは好きなんだが…オニーサンはお気に召さなかった様子 背中を蹴られて風呂へと入れられ、仕方無く服を消して、その辺にある固定石鹸で髪と身体を洗い流す 人間と違って髪質やら、外見なんて好きなように変えれる淫魔にとって、何で洗おうが変わらない 匂いさえ消えればいいんだが、少しだけ今朝付いた、オニーサンの匂いが無くなったのは寂しいな 「 まぁ、また後で付けよう 」 今日は沢山魔力を使ったんだ 貰ってもいいだろうと考え、しっかりと湯を満喫し服を着て、リビングの方へと行く 「 あぁ、翔太……何してんの? 」 「 んー……。財布の中身を確認してる。レシートとかいらないし、お小遣いの計算? 」 「 また小難しいことを…… 」 オニーサンは洗濯でもしに行ったのか、此処にはいなかった テーブルの上で小銭を並べる翔太を見て、今のコインを知ってても良いだろうと、横にある椅子を引き、座る 「 シルバーのこれはなんぼだ? 」 「 それは百円玉。こっちは五百円だよ 」 「 ひゃく、えん……? 」 ドルでもユーロなんてものでもない、円 知るのさえ嫌になりそうな内容だが、コインを指で引き寄せては、親指に乗せコイントスをする 「 翔太、表と裏。どっちだと思う? 」 「 んー、柄が上! 」 「 さて…… 」 柄はどっちでしょうとばかりに、手の甲を見せるように手を外せば 翔太の言った通り、柄が上だった 「 やった、当たった! 」 「 ……翔太、この五百円と百円玉借りるぞ。明日には返す 」 「 あ、うん…分かった 」 「 ちょっと魔界に戻る。オニーサンには適当に伝えてて 」 コインを二枚握り締め、魔法陣を発動させ中へと入り人間界を立ち去った 「 悪魔はどこ行った? 」 「 うーん、僕のお小遣い持って、魔界に帰ったよ 」 「 は? 」 魔界の見覚えるのある場所に魔法陣を表し、姿を現し、ゆっくりと歩いていく 何かオニーサンから感じる殺意に背筋が寒くなるが、ちゃんと返すんだから良いだろう?そう、カリカリしないでな…って思い 見渡す限り剥き出しの岩が連なり、赤黒い殺風景な魔界を歩いては、自分の寝床があるサタン城へと戻った 「 クオレ様!?人間界に行ったと聞いたのですが…… 」 「 そう、ちょっと忘れ物したから戻ってきた。すぐに人間界に戻る 」 城の兵士である、デビル系やつに驚かれても放置し、廊下を歩き、階段やら上った先にある自分の部屋へと行く 「 んー……どこに置いたっけか……ここか? 」 「 よう、クオレじゃねぇか。人間界に遊びに行ったのに、もう帰ってきたのか? 」 背後から聞こえてきたのは兄のシヴァ ディアモンの二つ後ぐらいに生まれて、千年以上は生きているらしい 階級は俺と同じく上級淫魔であり、 特にコイツは男が好きだと聞いたことがある 小さい頃はよくヤられたし、そのせいで俺はどっちも好きなんじゃねぇかなって思う 「 嗚呼、忘れ物してな…… 」 「 ほう?ディアモンが心配してたぞ、魔力を消した事で……苦戦してないかって 」 「 特に問題はねぇな……。あったあった 」 タンスの底の引き出しを開け、トランクを見付ければ中にあるのはいつしか人間界で金目のものをついでに貰って集めた宝石の数々 これがありゃ、今の人間界で物が買えるだろうと思い取りに来たんだ 「 ……しかし、御前の魔力がねぇと、こんなにも存在感が無いのか?さっき見なければ入ってきたのも分からなかったぞ 」 「 だだ漏れって言われてたからな…。なぁ、シヴァ……金になると思うか? 」 「 そりゃ数百年前のジュエリーなら、ものにもよるが日本円で数千万はするだろう 」 持ち運びしやすそうなネックレスを数種類手に掛けて、振り返れば入り口に立っていた 銀髪に金色の目をしたシヴァは出ようとした俺の前に立ち、止めた 「 そうすぐに帰んなよ。折角、会ったんだし兄貴と遊んでいけよ 」 「 魔力貰って良いなら…遊ぶ 」 「 くれてやるよ。クオレ 」 服のポケットにネックレスを入れ、胸元に触れるシヴァへと視線を落とし、腰に腕を回し顔を寄せる 彼の金色の瞳は徐々にルビー色に染まり、噛み付くように口付けを落とせば、シヴァは口角を上げ受け入れた 今日はそっちの気分なんだな、と理解すれば後は自分のベッドに押し倒し、服を乱せば行為へと移る シヴァは、牡牛であり頭の後ろへと向けて反った角がある 口付けを落としながら、牛のような尻尾を触れば、熱い息を吐き楽しむように笑う ディアモンは少し乙女なわりに、女好きであり、シヴァは男が好きだからな 兄弟だろうと、俺と同じく行為をするのを気に入っている サタンの子である淫魔は、オスメス問わず十二体存在する 俺はその、始まりであり終わりの十二番目の″牡羊″だ 「 なぁ、クオレ……御前……。少し、天界の奴等の″生気″が混じってたが……関わっては無いだろ? 」 「 天界?まさか、会うわけないし 」 行為を終え、ベッドに横たわるシヴァの横に座り、ネックレスを拭いて磨きながらその言葉に鼻で笑う 「 本人達じゃなくて…加護を受けてる。例えば…あれだ、巫女、神主、聖女、神父とかだ。そんな人間には近付いてねぇだろ? 」 「 んー…多分会ってない 」 「 御前の事だから、欲に負けて抱いてんのがそいつ等だったりしてそうだな……。だが、そんな奴が淫魔とヤるとも思えねぇし…… 」 天界の加護を受ける奴に会っただろうか? 待てよ…… ふっと、そんな加護を受けてる連中が普段どんな物を持ってるか古い記憶を呼び覚まして 考えていれば、あのオニーサンと出会った当時に持ってたものと不快感がある建物の中にいたのを思い出した 「 なぁ、シヴァ…そいつ等って……十字架持ってたり、銀の弾丸を持って…… 」 「 御前まさか、抱いたとかねぇよな!!? 」 急に起き上がったシヴァによって、ベッドに押し倒せれ、上に乗り胸ぐらを掴み 驚いた声と切羽詰まるような反応に、視線は自然と明日の方向を見る 「 おい、クオレ!こっちを見ろ。テメェ、神の加護を受けた奴に手ぇ出したら。事によっちゃ天界の奴等に殺されるぞ!! 」 「 ……そいつが悪魔に味方すりゃいいよね?なら、大丈夫だって 」 「 馬鹿いえ。そんな連中が悪魔に心を売るかよ。御前…死んだな。俺は知らねぇからな…… 」 聞いたことがあった 昔、悪魔にとっても昔だと思うぐらい前に 神の加護を受けた人間に手を出した悪魔が、悪魔殺しの剣に敗れ、灰になって殺されたことを… そいつは聖女に惚れた、哀れな悪魔だと誰もが笑っていたらしいが 反対に、それを聞いた者は神職の連中に手を出す事は止めたんだっけ もう少し早く思い出せばよかったが、 今更如何でもいい 「 悪いな、シヴァ。俺はそいつと血の契約をしてる。サタンに背いたのは…俺かも知られないぞ 」 「 なっ……!? 」 意識をすれば首に現る、悪魔の契約の印 まるで犬のように、鎖が首を一周してるのを見たシヴァは腹の上で座った 「 はっ……。御前……神職の奴と…契約したのか。そこまでして…気に入った人間なのか 」 「 嗚呼、俺にとって最高の果実だ 」 神に背き、父であるサタンにも反する事になる どちらの味方に傾いた時点で、バレたら殺されるだろう 善と悪が紙一重の連中か、私情は無く容赦のないサタンならば、どちらも同じ判断下すのは想像はつく それでも、オニーサンを手に入れたことは俺にとって大きな価値だ 「 ……いつか馬鹿をやると思ってたけど、本当に馬鹿だとは……。今なら間に合うぞ…その人間を殺し、魔界に戻って来い…… 」 「 極上に熟したら殺すさ。それまで俺は甘く食べ頃になる迄、大切に育てるんだ。じゃな、シヴァ。次に魔界で会ったらまた交尾しようぜ 」 直ぐに殺しては詰まらない 折角、数百年に一度の汚れのない魂であり身体の相性もいい人間なんだ 勿体無い事はしない その為に、不味い人間界の飯を食おうとも その魂を啜る時を楽しみにしてるからだ 置物のように横に倒れ、クッションへと顔を埋め、牛の尻尾がへなったシヴァの髪を撫で回しては綺麗にしたネックレスを持ち、部屋を出た ″ 牡羊が馬鹿をしでかしか ″ ″ そう。許してやってくれよ?彼奴は恐らく気付かないまま近付いたに違いねぇし ″ ″ ふっ、海を渡った先にいる、神に見捨てられた者だろう。問題は…その聖地に住む神々の逆鱗に触れなければいいがなぁ? ″ ″ あぁ、確かにそっちの方が厄介だな ″ ″ ククッ……見物してやろう。 如何なるか…アイツ次第だ ″ 魔王城の中央にある、玉座に座るサタン そして、くつりと笑った長男は長い黒髪を揺らし赤い魔界の空へと視線を向け呟いた ″ クオレ……。御前の好きにすればいい。 それが全ての答えであり……結果だ ″
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