俺だけが知っている秘密(魔人ケルトは愛を謳う)※BL

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俺だけが知っている秘密(魔人ケルトは愛を謳う)※BL

「おい! こいつがどうなってもいいのか?」  ぼんやりとしていたら首に刃物を向けられ、人質になってしまった。  戦闘が終わり、みな息を抜いていた。俺も然りで、まさか残党がいたとは夢にも思わなかったのだ。と言っても、自分は術者なのですぐに抜け出せるのだが。  俺の目の前には、ざわついている仲間の兵。そして真っ赤なコートと三角帽子を身にまとった相棒、ケルトがいた。  俺を人質にした男は、落ち着いたトーンでケルトと交渉をはじめようとする。 「貴様がケルト将軍だな? この男を失いたくなければ――」 「好きにしたらいい」  ケルトの声は底冷えしていて、聞く者すべてを凍らせた。ああ、はじまったなと思う。動揺したケルトは一周まわって冷酷になる。昔から付き合いのある俺だからこそ分かるが、他のやつは怯むだろう。  ケルトのほうが小柄だが、まるで男を上から見下げているような迫力があった。 「そいつが死のうが死ぬまいが、僕には関係ない。殺したかったら殺せ」 「……あのなあ」  術で男を黒焦げにした後、俺は息を吐いてケルトに歩み寄った。俺を人質にした男は後ろで大火傷を負っている。詠唱や触媒なしで術を発動できる者はほとんどいないから油断したのだろう。  ケルトは三角帽子を目深に被り、踵を返した。 「遊んでないで、さっさとやればいい」 「……お前さ、心配するならもっと素直になれば?」 「誰が心配など――」  ケルトの肩を掴んで振り向かせる。帽子と前髪の隙間からぎらりと光る目が見えた。完全に瞳孔が開いている。素直じゃないこいつの、一種の愛情表現だ。にやにやと笑えば、ケルトの眉間に皺が刻まれた。 「キスしてあげましょうか? オニーサン」 「……公衆の面前でなんてごめんだね」  ケルトが俺の耳に口をよせ、「あとで覚えておけよ」と言う。それが嬉しくて笑みを隠さずにいると、ケルトの顔は更に険しくなるのだった。
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