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恋をしない貴女に恋をした ※GL?
私には好きな女の子がいる。中学時代からつるんでいる腐れ縁の女の子だ。
清楚で可憐でありながら、華やかすぎないラフな服で歩く。なによりも私は、彼女の誠実な精神を愛していた。誰にたいしても真摯に対応する彼女を、好ましいと感じていた。
しかし彼女は、誰にたいしても誠実でいるのと同じように、誰にたいしても恋をしないのである。
中学のときに、彼女は私以外の誰もいない教室で寂しそうに呟いた。
「私、誰とも恋愛できないと思う」
その言葉のとおり、彼女は今まで一度たりとも恋人をもったことはなかった。それ以来、ずっと私は失恋しっぱなしである。それでもいい。私は彼女と恋愛したいわけじゃない。ただ、魂を通わすだけでいい。
今日も飲みの帰り、千鳥足になる私に彼女は苦笑していた。
「ねえ、前から気になってたんだけど」
彼女が突然言い出して、「なに?」と聞き返す。彼女はいつもの淡々とした表情で言った。
「私のこと、好きでしょ?」
一瞬、時がとまった。火照った身体の熱が一気に冷めていく。それでも冷水を浴びた頭は、気持ちを伝えるチャンスかもしれないと考えた。
でも、本当にいいのか? 彼女に自分の気持ちを押しつけることにならないか?
私は喉を震わせた。
「うん、好きだよ」
「……ごめん」
彼女の謝罪に、心臓が呻いた。泣きたいのは私のほうなのに、彼女は傷ついた表情をしていた。
「私、ずるいよね。気持ちに答えられないのに、貴女と一緒にいたいなんて」
「別にいいよ。恋人になりたいわけじゃないから。あんたと一緒だよ。ただ、一緒にいたいだけ」
「……でもね、貴女のことは好きなんだよ」
「分かってるって」
彼女は視線を彷徨わせ、酒で赤くなった顔を隠そうともせず、口を開いた。
「そんな私で良かったらだけど……一緒に住まない?」
フリーズして数秒後、私の喉から凄まじい絶叫が飛び出すのだった。
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