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 目の前に初老の男性が杖をついて歩いていた。  足取りはおぼつかない。 「もしかしたらチャンスかも」  そんな想いが頭の中で()ぎる。  案の定男性は歩道の点字ブロックに足を取られ転倒した。 「よしっ」  すかさず手を差し伸べようとしたとき、俺より先に男性に手を差し伸べたヤツがいた。  俺より少しだけわかそうな女性だった。 「おじさん、大丈夫ですか?」  おじいさんと呼ばないところもめざとい。 「おぉ、すまないね。つまずいてしまって」  男性は女性の差し伸べた手を取って立ち上がった。 「お怪我はないですか?」  女性はさらに踏み込む。 「あぁ、大丈夫だ。ありがとう」 「これからどちらへ」 「角を曲がったところにある病院にな」 「だったら私が付き添って行きますよ」 「本当かい。そりゃー助かる」 「もちろんです。困ったときはお互い様ですよ」  男性はホッとした表情を浮かべ頭を下げた。  その瞬間だった。
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